ポスト
桜のてっぺんを見下ろす階に住んでいるが、玄関の前に、毎日のごとく数片の花びらが吹き溜まる。 今年に限って、そうなのだろうか。前からそうだったのに、気づかなかっただけなのだろうか。 ……という弾みで思い出した、藤原成通(1097-?)の歌。彼は和歌や今様に加え、笛や蹴鞠も得意としていた。
メニューを開く謎彦 Nazohiko@nazohiko
水の面にちりつむ花をみる折ぞはじめて風はうれしかりける 藤原成通 『金葉集』は当代歌人を多く採り、この成通は入集時に20代だった。水面を覆う桜の花びらに美を見出し、それ故に、花を散らす風も捨てたものではないと思い直した二重の「発見」を、「はじめて」の一語に結晶させてしまった俊才。