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そんな少女時代はもう、とうの昔のことだ。過ぎ去った時間は戻らない。 アナンシャは瓦礫の中から亡きアリーが勝手に触っては嫌いな色に変えていたホログラム投影機を見つけ出し、活動服越しにホコリを払った。 火星コロニー存続の危機という今、父アリーの残した手がかりの言葉だけが頼りだった。(続
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火星の生末はこのホログラム投影機と父の言葉にかかっている。…アナンシャの考えが正しければ、だが。 彼女は大事そうにその小さな球体をバッグの中にしまいこむと、赤い砂を踏みしめて荒涼とした大地を駆けていった。 (終