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手の感覚がもはやない。柄を握っているのかいないのか分からない。 ただ、ずっしりとした重みがある。 それは、力の抜けていく人間ひとりぶん。 声も出ない。叫べもしない。思考回路が吹き飛んで、できるのは目の前の光景をただ受容することだけ。 また唇が動いた。細い体を剣に貫かせたまま。

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むくの丸@mukunomaru

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「ありがとう」 ちいさな微笑み。 同時、ずるりと体がうしろに倒れていく。 ぶわりと花が散るみたいに藤色がまた揺れて、それなのに同じいろをしたその瞳はどこをも見ていない。 割れたガラスに立ち尽くしたひとりの男がうつる。 誰かも分からない。ただ剣の重みだけが、手の中に残されていた。

むくの丸@mukunomaru

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