ポスト

老女の庭には無花果の木があった。息子を身篭っている間に、亡き夫が知り合いの大工に任せて建った大きな日本家屋は、立派な白壁と木々に囲われ、その外に葱や冬瓜、覆盆子などが一定の秩序をもって並べられた畑を有していた。夫と死別してからは、老女ひとりでは手が行き届かずに所々鬱蒼と生い茂って

メニューを開く

エノコ@enotan__

みんなのコメント

メニューを開く

いた。夫は膵臓癌だった。朝、老婆は軒下の切り株に腰を掛け、広大な庭の様子を眺めるのが好きだった。その後、老女は拠れた薄桃のレースがついた肌着から、見る度に広がっていく脛の痣を鋭い朝の冷気に晒し、枯れ木のような足首を踏みしめて、鼬を捕らえるための罠を覗きに出る。罠にかかった鼬を

エノコ@enotan__

人気ポスト

もっと見る
Yahoo!リアルタイム検索アプリ