ポスト
「本当はいるんでしょう?」 と記者は言った…… その日は夏目漱石が居留守を使って 家に隠れていた日。 外の風が強く、葉がカサカサと音を立てている。 玄関に出た女中は、困り果てた表情で 書斎に戻り、 「いくら留守だと言っても帰ってくれません」と 涙ぐみながら彼に訴える。…
メニューを開くみんなのコメント
メニューを開く
玄関に向かう途中、 書斎の壁にかかっている絵画や 本棚の一冊一冊が彼の目に留まる。 これらの物が、彼の心の安らぎを 提供してくれる静かな空間を作り上げていた。 漱石は、記者の顔を見るや否や、 低い声で毅然とした口調で言った。 「いないものはいないのだ。 私が言うのだから、確かだ!」