ポスト
昔住んでたアパートの前をたまたま通りがかって、今にも崩れそうだったオンボロがまだ建っていることに少し驚いたりした。暑さを増してきた空の日はだんだんと高くなっていて、ただでさえ小さなアパートはより一層ちっぽけに見えた。すぐに通り過ぎてしまうのがもったいなくて、
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縮めた歩幅でゆっくりと前を通る。私が住んでいたのは、たしかあの部屋だった。外すのが面倒で置いたままにした窓用エアコンは、まだ残っているのだろうか。そんなことを考えながらぼんやり眺めていた隣の、茶色い扉が徐に開いた。少しだけ空いた隙間から、ひとりの男が出て来る。