「…ほら、あれが」「跡部様に纏わりついてる…」ひそひそと聞こえる声に顔をしかめる。だが当の神尾は涼しい表情だ。「言われっぱなしでいいのか？」「言うだけで行動に出ないやつなんて怖くねーよ、こちとら不動峰で鍛えられてるんだぜ？」ニカッと楽しげに笑う神尾は随分心強かった。 #一日一ベカミ

「どこか行きたい所はあるか」「へ？何だよ急に」「今度の休みの話だ」「あー、えーっと、そうだなぁ。行きたい所かぁ」「国内でも国外でもいいからな」「いやいや、流石にそれはさぁ、なぁ？」「……」「あ、えっと！水族館か遊園地、それかテニス」「オマエ、本命は最後だろ」「うん」 #一日一ベカミ

いつも通りに完璧に役割をこなす。大量の書類に目を通していると着信音が聞こえた。メッセージに添付された写真は雲一つ無い青空。『跡部見てみろ、五月晴れ！』用件も何も無いメッセージを見て、思わず口元が綻んだ。「会長が…見たこともないくらい優しく笑ってる」「一体誰から…？」 #一日一ベカミ

さっきからさ、跡部の携帯が鳴ってる。でも跡部はさっき部屋を出って行って、まだ帰ってこない。何度も鳴ってるから急ぎなんじゃねぇのかな？あ。「どうした」「跡部、携帯、さっきからずっと鳴ってる」「そうか」「おう、って出ないのかよ」「オマエの方が優先だろうが」「いやいや」 #一日一ベカミ

「神尾、お前さっきまで跡部部長と一緒に居なかったか？」「んー？跡部なら手塚さんに呼ばれてなんか話し合ってるらしいけど…探してるのか？」「ああ。…なんかうちの部長を探してるのにお前に居場所を聞くって変な感じだな」「…それは確かに」「戻ってきたら連絡してくれ」「おうよ」 #一日一ベカミ

「スッゲェ雨だなぁ」「そうだな」「跡部んとこは……大丈夫だよな」「当然だ」「だよな」「オマエは大丈夫なのか」「へ？あー、うん」「……歯切れが悪ぃな」「や、大丈夫だって、走ってズボンが濡れたくらいだし」「オイ」「ほんとちょっとだからさ、へーきへーき」「何言ってやがる」 #一日一ベカミ

雨がスゲーから跡部御自慢のトレーニング施設に連れてきてもらった。腕をガショガショするやつとか、走るベルトとか、バーベルのスゲーのとかいっぱいあってホントにスゴイ！「ありがとな、跡部！」「ああ。…トレーニングが終わったら国語の勉強もやるからな」「え！？なんで！！？」 #一日一ベカミ

「今年はもう台風ができてるんだな」「そうだな」「こっち来るかもってさ」「らしいな」「そのせいかな、明日大雨予報なの」「そうかもな」「……なぁ、もしかしてさ、つまんねぇ？」「アーン？」「さっきからスゲェテキトーな返事してるだろ」「してねぇよ」いいから宿題を終わらせろ。 #一日一ベカミ

「あーびしょ濡れ！週のはじめから雨だと学校に来るモチベーションが下がるよなぁ」「そもそも勉強するってだけで神尾のモチベーションは上がらないだろ」「うっせ！」「神尾はほら、跡部さんにお願いすれば車で送迎してもらえるんじゃない？」「やめろ聞かれたら本気にするからアイツ」 #一日一ベカミ

「本当に神尾はいつも元気だよな」「はいっ！」「なんつーかうちには無いキャラだよな。犬っぽいのは鳳がいるけど犬種が違うってゆーか」「？けんしゅ？」「跡部って動物好きだもんね。そりゃあ目が離せないわけだＣ」「？何の話っすか？」「まあ、これからも跡部をよろしくって話やな」 #一日一ベカミ

「どうだった」「うん、楽しかったぜ！」貸し切りでクラシックコンサートって、俺にはハードル高すぎるだろって思ったけど。実際に聞いてみたらめちゃくちゃ楽しかった。CMで聞いたことある曲がたくさんだったし。「楽しめたならいい」「おう！あ、でも次は貸し切りはやめてくれよな！」 #一日一ベカミ

「コンサート？」「あぁ」「ライブじゃなくてコンサート、なんだよな」「だからそう言ってるだろ」「因みにさどんなやつ？」「クラシックだ」「……おう」「そんなにかしこまる必要はねぇよ、知り合いの楽団で貸し切りだからな」「あのさぁ」「何だ」「それ全部プレッシャーなんだよ！」 #一日一ベカミ

「跡部にオススメの逸品があるんだぜ！」「なんだ？」「じゃーん！俺のばあちゃん特製イナゴの佃煮だ！結構イケるぜ！」「……イナゴ？」「イナゴ」「あの昆虫のイナゴか？」「おう！ぴょんぴょんするやつ！」「…食うのか」「田舎じゃ食うな」「……用事を思い出した」「あ、逃げた！」 #一日一ベカミ

あとでコンビニに寄ると言っていたくせに。通りがかった道にある店には入ろうとしない。「おい」「ん？」「コンビニ行くんじゃなかったのか」「ん？行きたいのはここじゃなくて別のとこ！青い方」「どこも一緒だろ」「一緒じゃねぇって！会社によって置いてるもんが違うの」「……へぇ」 #一日一ベカミ

「どうした神尾、わかりやすく凹んでるな」「好きだったマイナーバンドが…解散するんだって…」「……そうか」「応援してたのにな…足りなかったかな」「向こうも人間なんだから色々あるだろ。…まあなんだ、今日の夕食はポトフにするように言っておいてやる」「ポトフ！？」「単純か」 #一日一ベカミ

「ハンバーガーが食べたくなる時ってあるよな？」と聞いてから、跡部にはないかもなぁと思ったんだけど。「……まぁな」首をたてに振るからちょっと驚いた。「え、あるのか？」「オマエが想像しているハンバーガーとは違うかもしれねぇがな」「あー、なるほど？確かにそれはあるかも」 #一日一ベカミ

「…んあ、寝てた？」「ああ。ぐーすかいびきをたてながらな」「あー…よっかっちゃってたのか、ごめん」「別に本を読んでただけだから邪魔にはなってねえよ、寝不足か？」「昨日遅くまで深司と駄弁ってたから…てかもうちょっと寝ていい？」「読み終わるまで好きなだけ寄りかかってろ」 #一日一ベカミ

ゲームに熱中している神尾の、くるくると変わる表情が面白くて、見ていて飽きない。だから注目していれば。「……何だよ」視線に気づいたらしい。「何でもねぇよ」気にするなと言えば。「もうちょっと待てって、この面クリアしたら交代するからさ」「……」待ってるわけじゃねぇんだが。 #一日一ベカミ

「…あ、この紅茶ダージリンだ」「ん？なんて？」「神尾に紅茶の違いなんてわかんのか？」「ハーブティーとかならわかるけど紅茶の種類までわかるのはスゴイね」「いやまあ…跡部が色々講釈垂れながら飲ませてくれるからなんとなく」「なんとなくで覚えるほど親密なのかー」「深司っ！」 #一日一ベカミ

「あ、なぁ跡部」「何だ」「えーっとさぁ、ちょっと教えてほしいことがあって」「何をだ」「教科書のさ、ここなんだけど全然分からねぇんだよ」「……珍しいじゃねぇの、真面目に勉強なんざ」「今度の小テストでいい点とらないと、母さんから部活が禁止令が出そうでヤバい」「まったく」 #一日一ベカミ

「これってどうやって動かすんだ？」「ダウンロードしたアプリをかざすんだよ、こうだ」「へー！自動でセットしてくれるんだ。最近はなんでもハイテクだよな」「効率化ってやつだな」「自分で片付けたり準備したりするのも楽しいけどな」「一からコートを作った奴の言葉は重みが違うな」 #一日一ベカミ

跡部に貰ったアドバイスを元に練習してたら、橘さんがスゲー褒めてくれたんだ。やっぱり跡部ってなんだかんだ部長なんだなって。２００人も面倒見てるんだもんな。俺もいつか後輩の面倒を見なきゃいけなくなるんだから、跡部からコツを教えてもらってもいいかもな。てかお礼言わねーと。 #一日一ベカミ

「なぁ聞いてくれよ」と会うなり興奮した様子で言うものだから。何があったのかと思えば。「来る途中でさ、めっちゃくちゃ大きい犬が散歩しててさ！ゴールデンかな？スッゲェ人懐っこい子で、撫でさせてくれてさぁ！可愛かった！」「……」「どうかしたのか」「今日もオマエは平和だな」 #一日一ベカミ

そろそろ帰るな、と言って立ち上がったら。やっぱり跡部も一緒に立ち上がる。「どうしたんだ？」分かってるけど聞いたら。「送っていってやる」やっぱりかぁ。「ひとりでも帰れるって」「知ってる」「じゃあ」「いいからおとなしく送られろ」「へいへい、分かりましたぁ！ありがとな！」 #一日一ベカミ

「跡部！餃子って食べる？」「餃子？いきなりなんだ」「今日の晩飯が餃子なんだよ。包むの手伝ったらたくさん食べれるから手伝ってくれね？」「……俺様に餃子を包めと」「やっぱ嫌か？母さんが跡部と晩飯食えるかもって楽しみにしてるんだけど」「…まあ何事も経験だから行ってやるか」 #一日一ベカミ

「あのさぁ」「何だ」「跡部はもしかしたら興味ないかもしんないんだけど」「前置きはいいから早く言え」「今度さ、今好きなバンドのライブがあるんだよ」「ほぅ」「で、チケットが二枚あって」「……いつだ」「行く、か？」「当然だ、オマエの誘いを断るわけねぇだろ」「サンキュー！」 #一日一ベカミ

「これ…！俺の好きだったバンドがまだメジャーデビューする前のCDじゃん…！」「やっぱりそうか」「な、な、なんで跡部が！？」「…最近、お前に影響されて聴くようになったら何故か社交界で俺様がこのバンドを気に入ってることになってな…やたらこういうのを渡されるようになった」 #一日一ベカミ

「跡部はたぬきときつねのどっちがいい？」「何の二択だ？」「うどん！たぬきが天かすの入ったうどんできつねは油揚げがのったうどんだせ！」「…ならもう両方入れときゃいいんじゃないのか」「え！？そんな贅沢…許されるのか…！？」「…あー、おう。俺様が許す」「流石跡部だぜ！！」 #一日一ベカミ

用を済ませる間、少し待っていろと言えば。神尾はカバンから取り出した雑誌を眺め始めた。「何を読んでるんだ」「ファッション雑誌」「……」「何だよその顔」「音楽以外にも興味があったんだな」「そりゃあるっての！っていうか、こっち見てないで用事終わらせろよ待ってんだから！」 #一日一ベカミ

面白いことがあったら次会った時に話そうって思うし、ウマいお菓子があったら食べないかもなぁと思いつつもう一個買ってみたりするし。毎日のようにメールとか電話とかするし、休みの日は遊んだりとか。いつの間にか、気が付いたらそんな感じだった。不思議だよなぁ。「な」「アーン？」 #一日一ベカミ

いや、まあ…その、俺と跡部は付き合ってる、わけだし？デート…っぽいものをしたりお泊まりをしたりはまあ、当然するわけだよ。でもほら、デートってだいたいテニスとその後の食事だし、お泊まりした時もテニスの話とか録画とか見たりしてるだけで…！ん？これって付き合ってるの、か？ #一日一ベカミ

跡部んちで出てくるお菓子は全部ウマい。だいたいは俺も知ってるお菓子だけど、時々、初めて聞くような覚えらんない長い名前のケーキとかあるけど、それもウマい。「跡部はいいよなぁ、毎日こんなの食べられるんだろ？」「オマエもそのうちそうなる」「？」「楽しみだろ？」「何が？」 #一日一ベカミ

跡部と一緒だとどこに行くにも車で送迎されるから電車に乗るのがなんか新鮮だな。…現地集合でいいって言ってるのに迎えの車を寄越されそうになった時はちょっと焦ったけど。現地集合には現地集合にしかないワクワクがあるんだよな。待ってろよ、跡部より早く着いて驚かせてやるんだ！ #一日一ベカミ

「あれ」「どうした」「いや、もうこんな時間なんだなと思って」帰らなきゃ、と言いながら神尾が立ち上がる。「最近はこの時間でも外が明るいから油断するよな」「……あぁ」答えながら同じく立ち上がる。「ん？どうかしたのか？」「送っていく、車の用意ができるまでちょっと待ってろ」 #一日一ベカミ

「これがお前の言ってたヤツか」「そうそう！美味しいから飲んでみろよ」「ふむ…ほどよく酸味があって飲みやすいな、乳酸飲料か」「どうだ？夏の風物詩だぜ」「悪くないな」「へへ。実は俺が配合したんだ！……まあ水で割っただけなんだけど」「ならもう一杯いただこうか」「任せろ！」 #一日一ベカミ

「うーん」「何を悩んでるんだ」ハンバーガーが食べたいと言ったのはオマエだろ。「食べたいもんは決まってるんだけど、飲み物がさぁ」「いつもの炭酸飲料だろうが」「うん、でも今日ちょっと寒いじゃん？」「……」「そんな驚いた顔しなくてもいいだろ」「驚かせる発言するからだろ」 #一日一ベカミ

「跡部の母さんって本当に子供産んだことあんの？ってくらいの美人なんだよな」「何、会ったの？」「うん。昨日帰ってきててさ…なんか、圧倒された。『これからも景吾をよろしくね』とか言われたけど俺によろしくできることなんてあるかなぁ？」「…さり気なく公認されてない？それ」 #一日一ベカミ

「あ」「何だ」急に立ち止まって。「この曲！何だっけ？最近流行ってるやつ！あー、タイトルが出てこねぇ！」「……」「跡部分かる……わけないよなぁ」「残念ながら知らねぇな」「だよなぁ……いい曲だからさ、聞いてみてほしいんだけど」「へぇ」「今度CD持ってくるな！」「ハイハイ」 #一日一ベカミ

ちょっと雲行きが怪しいけど、おかげで日が遮られて快適でもある。「というわけでテニスしようぜ、テニス！」「別にお前は気温も気候も関係なくテニスに誘ってくるだろうが」「へへ、だっていつでも跡部とテニスしたいからな！」「……たく本当にお前は…、手加減してやらねえからな」 #一日一ベカミ