#１日１物語 「ここを終(つい)の住処にするわ」 　出窓、小さな庭、エメラルドグリーンの屋根を持つ小さな家。一目惚れだった。 　幸せな毎日だった。でも少しずつ大切なものが壊れていくのを止めることはできなかった。 　そして私は全てを失った。 　ここは住む人を終(しま)いにする住処だった。

#１日１物語 「皆が幸せになりますよう」 　小さな声で願った。世界から諍いが無くなれば巡って僕の禍が減る。 「自分の幸せを願えばよくない？偽善だね」 　隣の参拝客が言った。 「いい願いだ。感心したよ」 　反対側にいた参拝客が言った。 「は？」 「え？」 　僕の願い事で諍いが始まった。

#１日１物語 　「君の人生の主役は君だ！」なんてよく聞くけど嘘よね。私はいつも誰かに振り回されてばかり。いつも決定権は私にはない。 　もし、もしも本当に私が主役だとしたら一度でいいから華やかな毎日を送りたいわ。 　好きな服を着て何をするか私が決めるの！失敗してもいいのよ！ 　自由よ！

#１日１物語 🎵生と死の間に起こる数々のこと 　笑いながら受け流していこう 　主役になるのさ 　自分でね 　禍は続く 　福は来ない 　幸にするのさ 　自分でね 　笑え　泣け　怒れ　叫べ 　今を楽しみ尽くせ 　いつだって青春 　生きているんだ

#１日１物語 あーめんどくさい。大人になんかなるもんじゃないなあ。なんで付き合いとかあるんだろう。親戚。友人関係。仕事の飲み会。町内組合。PTA。等 もう全部捨てたい。猫になって寝ていたい。 バンッ！ チーン 転生して猫になった。どこに行っても引っ掻かれる。猫の方が付き合い大変だ。

#１日１物語 「もう全部やめにしたい」 頑張ったって損するばかりだ。 『イイコトアルヨ』 頭上から降ってきた性別不明で特徴のない声の「お告げ」に導かれ必死に生きた。大往生を迎えた今、首にはメダルが掛けられている。園児の頃に人生で初めて貰った手作りのメダルだ。 「そうだ、あの声は…」

#１日１物語 「お聞きしてよかった。説明がわかりやすい！助かりました」 　またお父さんの「助かりました」が出た。こう言う時のお父さんは実は何も理解していない。後で「先日のことなんですけどね」と電話する。たぶん今回も問い合わせるんだろう。変に納得顔とお世辞を言わなきゃいいのに。

#１日１物語 　あれから何年経っただろう。目が覚めたら母がいて泣いてしまったあの日が懐かしい。一人暮らしが板に付いてもう寂しいとは思わなくなった。何より私は一人ではない。あの人がいつも後ろにいてくれる。職場も買い物もシャワーもどこでも寒気と共にあの人が私の背後にいる。ずっと。

#１日１物語 　向日葵のような女の子がいました。周りを明るく照らす彼女はいつも群衆に取り囲まれていました。 　ある日彼女の周りから人がいなくなりました。彼女は群衆に取り尽くされてしまったのです。 　そこには一粒の種が落ちていました。男の子がやってきてその種を拾いにっこり笑いました。

#１日１物語 　仕事がうまくいかず自信が持てない。 　毎日クレームだ。 「遅い」「気が利かない」「向いてない」 　言ってくれるな自分が一番わかっている。 「あの…」 　もううんざりだ。 「この頃世間のスピードが速くてついていけないの。あなたの速度が心地いいわ」 　下心を疑う自分が嫌いだ。

#１日１物語 　大きなほくろを脇の下に見つけた。 　触ってみると硬い。思い切って爪を立てたらポロリと手のひらに落ちた。つんとする匂いに思わず「うわ臭い」と声が出た。 　「ｳﾜｸｻｲ」と声がする。歯が見えた。ﾋﾋﾋと笑っている。 　思わず落とすとソレは排水溝に流れてった。笑い声が残る。