自宅が広く感じられる時は、暗闇の中を手さぐりで進んでいる時である。 狭く感じられる時はもちろん、ヒステリーを起こした妻から逃げまわっている時である。 #筒井康隆. #天狗の落し文（新潮文庫） (p.47). 新潮社. Kindle 版.

「なあおい。しばらくセックスをやめてみないか」 「しばらくって、どれくらい」 「さあ。半年とか、一年とか」 「半年は長すぎるし、一年はもっと長すぎるわ。いっそのことその中間をとって、四日にしない」 「何が中間だ」 #筒井康隆. #天狗の落し文（新潮文庫） (p.32). 新潮社. Kindle 版.

小説が書けなくなり、いつまでも死ななかったらどうなるかを考える。 公園のベンチで一日過ごし、たまたま隣りに掛けた文学部だという学生に打ち明ける。 「実はのう、わしは昔、筒井康隆だったことがある」 「あはははは。嘘だあ」 #筒井康隆.#天狗の落し文（新潮文庫）(pp.30-31).新潮社.Kindle版.