窓の下を行進する義眼のレミング 長い舌を伸ばして 恒星の光を察知する 痩身が熱に照射される 逆探知された諦念を 拡散されぬよう泥濘に埋める ほんのかすかな腐臭が 愛の印のふたり かくれんぼをしていて 家に逃げ帰ったあの日から ずっと逃げ続けている 暗い影を引きずりながら #詩日記 20240505 pic.twitter.com/ilpoeeCcQi

言葉にしなくとも流露する 想いのかたち 草が匂い立つ初夏に 玻璃となって互いの掌に零れる 掻破された皮膚から そらに擬態した透明な虫たちが そらに消えていく 耽溺できるのは刹那のこと あとは蕭々と続く下り坂を ひとのかたちをした残像を追い 伸ばした指に絡まる 荊棘の樹液 #詩日記 20240504 pic.twitter.com/DKKWLQexqm

ぼくの指先から悲しみの花が咲く きみはそれをむしって食べる 花は甘くて猛毒だから きみは段々弱っていく Ｔ字路に立ってずっと動けない 右にも左にも行きたくない まっすぐ進む術を思案して 翼が生えるのを待つことにする 生きていれば積もる悲しみを 抱えきれない弱さを刺す #詩日記 20240503 pic.twitter.com/28B59nBC9Q

初夏という言葉が似合う躑躅にはとても強固な意思を感じる 久しぶりの短歌。 定型はやっぱり詩より難しいなあ。 #花よ詩 #詩日記 20240502 pic.twitter.com/oqI0pKwJo4

往生際の悪い鳥たちが 脳みそに棲みついて からだの中を飛び回っている 鳴声と羽音がうるさいので からだのそこここに ナイフを突き刺していく こんなことぐらいでは死なないし 傷だらけになっても誰も気づかない 誰もが自分のことで精一杯だから ぼくはぼくの一番の理解者になる #詩日記 20240502 pic.twitter.com/Ixc2eNmLAy

長袖では暑いけれど半袖だと寒い 汗ばんだからだが風に吹かれる 緯度も経度も誰かが決めたものだから ぼくたちはぼくたちの 緯度と経度を決めて歩もう 電線の上の二羽のカラス ずっと押し黙っているから ぼくが代わりに鳴いてあげる 変哲のないまち並みに 神様が落した真実を拾う #詩日記 20240501 pic.twitter.com/0bhzA8dXYw

夢のほんとうは世界のうそ きみのほんとうはぼくのうそ 地下水にだけこころがある 騙されたふりをしているうちに 自分を見失うのが常だから じょうずに騙してほしいんだ 何も考えないのが楽だと悟り 自分をどんどん消していく シリアルナンバー付きの レプリカント 安寧に眠る #詩日記 20240428 pic.twitter.com/dV3pumMkPN

三日月は夜の傷だから とうめいな血が流れ出す 傷の内側に舌を入れて 夜に溶けていく 消えるボールペンで記述された きみとぼくの物語は 少しずつ失われていく 記憶は悪びれずに嘘をつく 道路に横になって 空が落ちてくるのを待つ 満月は夜の掌だから 握ったり開いたりを繰り返す #詩日記 20240427 pic.twitter.com/IU04NSzPHC

アスファルトが匂い立つ道路 逃げ場のない水が空を映す 売り切ればかりの自動販売機 遠くの海から持ってきた深層水が きみのからだに入ろうとしている きみのこころは深層水よりも 深くて澄んでいておいしい ぼくらの生きた証は スマホの中にしかないんだ てのひらに収まる人生 #詩日記 20240426 pic.twitter.com/vtC6yduVn3

コンタクトレンズがずれたように 世界がぼくから遠ざかる 見えづらいから想像でおぎなう 言葉で伝えきれないことがあるから ひとは涙を流すようになった きみの涙はぼくよりしょっぱい 小さな声でつぶやかれた言葉は インクの切れたボールペンでなぞられ 深い刻印をぼくの胸に残す #詩日記 20240425 pic.twitter.com/BFvH6lEiG9

耳鳴りの音を楽譜に起こす 耳朶に爪を立てる 生きているだけで音楽が溢れる 浮き出ている静脈に 流れている血を想像する からだのなかに雨が降り からだのなかに川が流れる 濡れた前髪で顔をかくす しずかに上下する胸 きみが手放した風船が 高く飛んでいくのを 一緒に見ている #詩日記 20240424 pic.twitter.com/lBTbwwNY6D

敷き詰められた小石 数年間放置されたコンポスト 隣家との境界に立つフェンスに 絡みつくヘクソカズラ あくせくと歩く蟻たち 壊れた雨どいから滴る水が開けた 地面の穴 匂い立つドクダミ 涼しげなハナミズキ 電線の下の鳩の糞 少しだけ吹く風 今日のぼくの宇宙の全部 #詩日記 20240422 pic.twitter.com/otgHD1FVJn

知覚過敏の花びらたちが 風に吹かれて痛がっている 死にたくないと 必死に萼にしがみついている 言葉を発さないいきものたちの言葉を ぼくたちは想像しなければならない しずかに生まれて しずかに死んでいく ちんもくのいとなみを ぼくたちは言葉にしなければならない 夜の祈り #詩日記 20240421 pic.twitter.com/JlP51Je21s

今日の悲しみに色をつけるとしたら きみは何色を選ぶだろう ぺんてるの 水で落とせるクレヨンで 明日の朝には消してしまう 真っ青な森を描く 大きな木の下で 箱舟で流れ着いた動物たちと 身を寄せて眠る こどくとこどくが合わされば きっと どくは 朝には中和されているだろう #詩日記 20240420 pic.twitter.com/0IrQiPkZoP

薄手のシャツに久しぶりに袖を通し 一年前の今頃を思い出す このシャツを何年着ているのだろう 捨てるのが苦手なぼくは いろいろなものを溜め込み 重くて動きが鈍くなる ここじゃないどこかに 憧れていた 若い頃の焦燥感 捨てられないものに埋もれて いまここが 大切になったんだ #詩日記 20240417 pic.twitter.com/RRHqkxMtMz

落水に逆らい遡上しながら 研磨された白い指先に 群れた猛禽類が胃酸を塗布し 赤く錆びて朽ちるのを さあ、おやすみなさい 執拗に絡まる邪推を振り切り 現像する眼を握り潰して 慰撫は甘く徒労に終わる 収監され拘束され詰問され 傷つく皮膚を緩慢になぞり ねえ、おやすみなさい #詩日記 20240416 pic.twitter.com/kBUX9rycaE

呼吸するのを忘れた鳥が そらで凍っている かなしい声を受けとるために 耳をすます 遠くで戦争の音 弾丸が狙っているのは 本当はぼくかもしれない ミサイルが飛び交い 人が死んでゆくその横で 花はきれいに咲いている それが花の役目だから ぼくの役目は 想像し 言葉にすること #詩日記 20240415 pic.twitter.com/eLRm16srX7

横断歩道の向こう側に立っているきみは なんど青信号になっても こちら側に渡ってこない 買ったばかりの苺から甘い香り 握りつぶしたいと思うぼくのこころは 長い舌を持つ蛇に嘗めとられる 雨のようにしたたる果汁は 川となって国道50号を横切り きみのつま先を赤く濡らすだろう #詩日記 20240414 pic.twitter.com/GLH09nPQI3

しずまりかえった朝 とおくでおじいさんの咳の音 世界が小さくふるえているのは はたして風のせいだろうか 呪文を唱えるかわりに ミントの強いガムを噛む ずっと昔好きだった子のことを思いだす 世の中は思い通りにならないことを知った あの日 ぼくはつまらない大人になった #詩日記 20240413 pic.twitter.com/WaRtyccozA

きみのかけらが落ちてきて あくびのように溶けていく ぼくの影が消えて 信号の影が伸びる じゃんけんは何度やってもあいこで つないだ手はいつもつめたい 靴を脱いで肩車をする どうしても届かないから 別れずにいられるのかな ないものねだりばかりして 大切なものを見失う日々 #詩日記 20240411 pic.twitter.com/33f3OrRQZ0

きみのくちびるからことばが生まれ しばらくとどまり しずかに散っていった だれもがおしゃべりになる夜 みんなささやき声なので 耳を澄ましあう 沈黙よりも深いさびしさ 多すぎても 少なすぎても 不安になる きみからぼくへ 風がなにかを運んできたけれど いつも掴みそこねる #詩日記 20240410 pic.twitter.com/jy8n3WkzS1