【越王大説】説は音「エツ」。悦に同じ。[#越王 大いに悦ぶ] 【故吳之地方五百里】其の時、#吳 は已(すで)に亡ぼされて、#越 に入れり、故に故吳という。 【束車五十乘】束は縛なり。車を數[数]えるに乘の名數を以てす。これ迎えの行列をなせるなり。【1】

もし #越王 にそんな気がないのに、わたしが出かけて行ったとすれば、わたしは義を金に換(か)えたことになる。どうせ換えるなら、わたしはこの中原の国で金に換える。#越 まで行く必要はないのだ」【1】

#公尚過 の報告を聞いて、#墨子 は、 「おまえは、#越王 がどういうつもりで、そんなことをいったと思うか。 もし越王に、わたしの意見を聞き入れ、わたしの説く道を実行する気があるなら、わたしは群臣の一人として、身分相応の待遇で出かけて行くだろう。待遇に釣られるようなわたしではない。【2】

「かしこまりました」と、#公尚過 が言うと、 #越王 は、車五十乗を用意し、公尚過を使者として、#魯国 に #墨子 を迎えにやった。 「先生の道を説いたところ、越王はいたく感激して、ぜひ、先生をお迎えしたい、もし承知なら、#呉 から奪った領地五百里四方を与える、とのことです」【1】

#墨子 は弟子の #公尚過 を #越王 のもとに派遣した。越王は公尚過の進言をきいて、すっかり感心した。 「ぜひ、先生に教えをこいたいものだ。ひとつ、先生をお迎えできるように骨折ってはくれまいか。先生がわが国まで来てもよいということであれば、#呉 から奪った領地五百里四方を与えよう」【2】

そもそも #越王 わが言を聴かず、わが道を用いずして、われ往(ゆ)かば、これわれ義をもって糶(う)るなり。これを鈞(ひと)しくするに糶るならば、また中国においてせんのみ。なんぞ必ずしも #越 においてせんや」。【1】

#子墨子、#公尚過 に謂(い)いて曰く、「子、#越王 の志をいかんと観(み)る。意(おも)うに越王わが言を聴き、わが道を用いんとせば、#翟(てき)、往かんとす。腹を量(はか)りて食い、身を度(はか)りて衣(き)、自ら群臣に比せん。なんぞよく封(ほう)をもってせんや。【1】

#子墨子 謂 #公尚過 曰、子観 #越王 之志何若。意越王将聴吾言、用我道、則 #翟 将往。量腹而食、度身而衣、自比於群臣。奚能以封為哉。【2】

遂に #公尚過 のために車五十乗を束ねて、もって #子墨子 を #魯 に迎う。曰く、「われ夫子の道をもって #越王 に説く。越王大いに説(よろこ)び過に謂いて曰く、まことによく子墨子をして #越 に至りて寡人に教えしめば、請う故の #呉 の地、方五百里を裂きてもって子を封ぜん、と」。【1】

遂為 #公尚過、束車五十乗、以迎 #子墨子 於 #魯。曰、吾以夫子之道、説 #越王。越王大説、謂過曰、苟能使子墨子至於 #越、而教寡人、請裂故 #呉 之地方五百里、以封子。【2】

#子墨子、#公尚過 を #越 に游ばしむ。公尚過、#越王 に説く。越王大いに説(よろこ)び、公尚過に謂いて曰く、「先生まことによく子墨子をして越に至りて寡人を教えしめば、請う故(もと)の #呉 の地、方五百里を裂きて、もって子墨子を封ぜん」。公尚過、許諾す。【1】

もし #越王 が私の説を聞かず、私の道を採用しないのに、私が往くとすれば、義を売物にすることになる。同じ売物にするなら、中国の内でやろう。どうして #越 だけに売る必要があろうか」【1】

#子墨子 は #公尚過 に向かっていった。「君は #越王 の意図を知っているのか。越王が私の説を聞き、私の道を採用するというのであれば、私は往(い)って、腹(はら)相応に食べ、身体(からだ)に応じた服装をし、群臣なみの生活をするだろう。どうして封地を必要としようか。【2】

#公尚過 はその申し出を承知した。そこで #越王 は公尚過のために五十輌の車をそろえて #子墨子 を #魯 に迎えさせた。「私は先生の道を越王に説いたところ、越王は大いに喜び、先生を #越 に迎え越王に教えるようにしてくれれば、#呉 の五百里四方の土地を以て先生を封じようと申されました」【1】

#子墨子 が #公尚過(こうしょうか)を #越(えつ)へ遊説(ゆうぜい)に出かけさせた。公尚過が #越王 に説いたところ、越王は大いに喜んで公尚過にいった。「もしあなたが子墨子を越に迎え余に教えるようにしてくれれば、もとの #呉 の五百里四方の土地を以て子墨子を封(ほう)じよう」【2】

#子墨子、#公尚過 に謂って曰く、子、#越王 の志を何若(いかん)と觀(み)る。意々(そもそも)越王將に吾が言を聽き、我が道を用いんとせば、則ち #翟(てき)將に往かんとす。腹を量(はか)って食い、身を度(はか)って衣(き)、自ら羣{群}臣に比すべし、奚(いずく)んぞ封(ほう)を以てせんや。【2】

#公尚過 許諾す。{#越王}遂に公尚過の爲めに車五十乘を束(つか)ねて、以て #子墨子 を #魯 に迎う。公尚過曰く、吾れ夫子の道を以て越王に説く、越王大に悦び過に謂って、苟(いやし)くも能く子墨子をして越に至って寡人に敎えしめば、請う故の #吳 の地方五百里を裂いて以て子を封ぜんと曰うと。【2】