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ただ幸いにも、この梯子を登れない程のものでもない。私は地上へのステップを一段一段と慎重に登り始めた。 「お前は何だ」 免色の声が頭上で聞こえた。 「私か。私はお前かもしれない」 顔のない男の低い声だ。 「如何いう事だ」 「そうだな、他人の家を強引に奪い取ったお前だ」 「違う、出鱈目だ」

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

はっきりとは認識できなかった。石室を覆っていたその霧は徐々に一塊のモヤになって上昇して行き、やがてそれは地上付近で顔のない男として現れた。私はその光景を石室の底で梯子に手を掛けたまま見上げていた。あの男がいない今のうちに、ここを一刻も早く離れるべきだが、腰と肩には痛みがあった。

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足音は免色一人ではなく二人だ。 「先生、大丈夫」 まりえの声だった。 私は声にならない声を絞り出した。 そして、この石室に金属の梯子が降りてきた。 「村上さん、梯子を登れますか」 免色の声だった。 「ええ、大丈夫だと思います」 と、私は答えた。 石室には霧の様なものが立ち込め、二人の姿を

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

その鳥が谷の方から此方へと飛んで来るのが分かった。木兎だ。その木兎はこの石室の上で旋回をしていた。それを追う様に獰猛な猛獣が唸り声を上げて此方に向かって駆け上がって来るのが分かった。免色のジャガーだ。急停車するブレーキ音が、アトリエの建つこの尾根に響き渡った。此方に駆け寄って来る

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その鳥が谷の方から此方へと飛んで来るのが分かった。木兎だ。その木兎はこの石室の上で旋回をしていた。それを追う様に獰猛な猛獣が唸り声を上げて此方に向かって駆け上がって来るのが分かった。免色のジャガーだ。急停車するブレーキ音が、アトリエの建つこの尾根に響き渡った。此方に駆け寄って来る

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「分からない」 「すべては決まっている事だ」 「この世界に不確かな事はないのですか」 「この世界も完全ではない。それをお前の世界では奇跡とも呼ぶ」 「それに私は、お前の意識の一部にある」 遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。見上げると夜空には爛々と星たちが輝いていた。私はまだ生きている。

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いや、もしかしたら自分を見失っていたのかもしれない。いずれにせよ、私が現実世界にいる事は確かだ。それに朝になれば免色がアトリエに来る。あの鈴を鳴らせば私が石室にいる事に免色は気づくだろう。私は石室の底にある鈴を手探りで探した。 「この鈴をお探しかね」 聞き覚えのある低い声だった。

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「離れない、こみに逢えるなら如何なってもいい」 その時、何かの力が身体を浮かせ、私を石室の中へと放り込んだ。気がつくと私は暗闇の世界にいた。地面についた手には土の感触があった。私は我に返り頭上を見上げた。そこには星空があった。一瞬の出来事であったが誤って石室に落下したのではない。

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3年前に免色が一人でこの石室に入った奇行と思われた行為を今の私には理解できる。 「此処に来てはだめ」 私の弱さが心の叫びとして聞こえた。 「お兄ちゃん、来ないで」 いや違う、それは忘れもしない13歳で死んだ妹のこみの声だ。 「お願い、目を覚まして」 「こみなんだね」 「此処から離れて」

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届いてはいなかった。私は石室の底を確認する為に此処に来た訳ではない。鈴を振る騎士団長がいるとも思っていない。鈴が鳴っていたかという事も如何でもいい事だった。ただ私は、私自身への告解を形にする神義の様なものが必要だった。それはこの石室に入り、そして心が安定したら此処から出る。そう、

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

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石室の中から聞こえる鈴の音が非現実的な世界へと導いた。あの時、石室を開かないという選択肢はあったのだろうか。もし、免色がいなければ物理的に開ける事は出来なかった。ただ私は、人生経験も長く論理的思考の出来る免色にその答えを求めた。尤も鈴の音が鳴っている限り、私は石室を開けただろう。

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

客観的な事実では、私と免色の境遇は似ても似つかない。勿論、私はゆずとむろを愛している事に変わりはない。その為にも私は此処に来た。そして、私が私である事を証明しなければならない。気がつくと、すっかりと日が暮れていて私の身体は暗闇に包まれていた。私は祠の裏のあの石室の事を思い出した。

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

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まりえの父だって被害者では? 免色さんも被害者? とか考えるの面白い だって死後の内容証明は爆弾だもの なにより娘が傷つくじゃん ほんと、ありがとう 高橋一生さん 高橋一生さんの朗読でなければこんなに何回も聞かないから多分ここまでたどり着かない

すず@suzuyus

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あわびで盛り上がってるなかすみません(⁠*⁠´⁠ω⁠`⁠*⁠) 未だ私は「騎士団長殺し」にもはまっています 免色さんの振る舞いは確かに常軌を逸してるけど そもそも65のBのひとが全ての種を蒔いたのでは 郭公じゃないんだから(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)

すず@suzuyus

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返信先:@_rui25るいさん的に免色と秋川まりえがどう見えたか個人的に気になりますねー! 自分としては雨田みたいな別荘に住まわせてくれる友人がほしかった←

Mシュンヤ@51dsc8Eu23khxiP

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返信先:@pikomofu本への入口が増えるのって楽しいし素敵よね(◍´꒳`)🧡 オーディオブックカフェ、フォローしてきたから聴いてみる♫ 高橋一生の免色さんの声色が低音でめちゃくちゃ素敵でずっと聴いてたいw

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客観的な事実では、私と免色の境遇は似ても似つかない。勿論、私はゆずとむろを愛している事に変わりはない。その為にも私は此処に来た。そして、私が私である事を証明しなければならない。気がつくと、すっかりと日が暮れていて私の身体は暗闇に包まれていた。私は祠の裏のあの石室の事を思い出した。

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残した手紙には、免色にまりえの存在が伝わる様な内容のものであった。そこにDNA鑑定の必要性を求める方が異常だろう。私とゆずは、ある時期からセックスレスになっていた。それは、ゆずから一方的に拒否された事だが、後に離婚を切り出された。ゆずは不倫をしていて相手の子供を孕っていたからだった

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残した手紙には、免色にまりえの存在が伝わる様な内容のものであった。そこにDNA鑑定の必要性を求める方が異常だろう。私とゆずは、ある時期からセックスレスになっていた。それは、ゆずから一方的に拒否された事だが、後に離婚を切り出された。ゆずは不倫をしていて相手の子供を孕っていたからだった

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私は免色を見送った後、何をすればいいのかも分からず、昼と夜とを結ぶ曖昧な時間の狭間の中で、その場から身動き一つ出来ずにいた。私の中で私を保っていた何かが崩れ落ちていくのが分かった。免色とまりえの関係には、恋人であったまりえの母との間に実際の行為があった。そして態々と弁護士を通して

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私は免色を見送った後、何をすればいいのかも分からず、昼と夜とを結ぶ曖昧な時間の狭間の中で、その場から身動き一つ出来ずにいた。私の中で私を保っていた何かが崩れ落ちていくのが分かった。免色とまりえの関係には、恋人であったまりえの母との間に実際の行為があった。そして態々と弁護士を通して

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不条理以外の何物でもない。私には答えが出せなかった。私達を皆殺しにした核兵器に私達は守られているのだ。また、他国にそう思わせて平和な暮らしがある。その平和な暮らしとは、竹島近郊の海で死傷した数十人の漁師の命や、家族を引き離されたままの拉致被害者も無視しての幻想の上に成り立っている

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というものは過去の積み上げであり数値化できるものだが、未来にはそういったものはない。私には事実や論理を超えた何かがある様に思えてならない。それは感覚的なもので説明のしようが無い。結局、私は免色に打ち明ける事が出来なかった。鉛色のジャガーはそのエンジン音と共に遠くへと消えていった。

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「光ですか」 「そう、希望の光です」 と、免色は言った。 確かに闇の世界には光がなかった。光に照らされたこのカラフルな世界も、ドロドロと色彩が見境なく混ざり合えば暗黒世界へと化してしまう。勿論、免色の言う事は 頭では理解するが、体毛が逆立つ様な身体全体が拒否反応を示した。事実や論理

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「光ですか」 「そう、希望の光です」 と、免色は言った。 確かに闇の世界には光がなかった。光に照らされたこのカラフルな世界も、ドロドロと色彩が見境なく混ざり合えば暗黒世界へと化してしまう。勿論、免色の言う事は 頭では理解するが、体毛が逆立つ様な身体全体が拒否反応を示した。事実や論理

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「理想を掲げる事は大切な事です。そうでなければ希望や未来はありません。私はこう考えます。人間も物質であり、その行動原理が万物の摂理に従ったものとするなら、人類が前進する為には私と村上さんの様な両極の思想が必要であり、その反動が推進力となり加速していく。光の波動がそうである様に」

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免色は味方なのか。味方だとしても如何にかなるものなのか。明日の朝までに自画像を描き上げ、全てが解決すると言う私の考えも、今、この時という時間も空間でさえも、何もかもがわからなくなった。 「村上さん、私はあの石室に入り、あなたに命を委ねました。覚えていますか」 「ええ、覚えています」

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「わかっています。ただ......」 「ただ、何ですか」 「今朝、唯ならぬ様子だったので」 「その事は明日の朝、全てお話しいたします」 「三年前に、私たちは不思議な体験をこの場所でしました。その事が何か関係しているのではないかと」 免色の言う通りだった。私は免色に打ち明けるべきか迷った。

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「わかっています。ただ......」 「ただ、何ですか」 「今朝、唯ならぬ様子だったので」 「その事は明日の朝、全てお話しいたします」 「三年前に、私たちは不思議な体験をこの場所でしました。その事が何か関係しているのではないかと」 免色の言う通りだった。私は免色に打ち明けるべきか迷った。

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私は免色に悟られない様に気持ちを落ち着かせ、ちょうど下書きも終わり一息入れるには良いタイミングだったのだと自分に言い聞かせた。 「気になるとは?」 と、私は免色に尋ねた。 「いえ、今回は水彩画で描かれるという事で、何か特別な理由があるのではと思います」 「そうです。ですから......」

Kyiv Kalashnikov@kiyuu_channel

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私は免色に悟られない様に気持ちを落ち着かせ、ちょうど下書きも終わり一息入れるには良いタイミングだったのだと自分に言い聞かせた。 「気になるとは?」 と、私は免色に尋ねた。 「いえ、今回は水彩画で描かれるという事で、何か特別な理由があるのではと思います」 「そうです。ですから......」

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「ええ、まあ、順調です」 私は古いコーヒーを捨て入れ直した。 「お構いなく、すぐに帰りますので」 と、免色は言った。 「何か急なご用件でも......」 「いや別に、ちょっと気になりまして」 「ちょっと気になる......」 私は免色の言葉を繰り返した。 そして、少し怒りの様なものが込み上げてきた

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「ええ、まあ、順調です」 私は古いコーヒーを捨て入れ直した。 「お構いなく、すぐに帰りますので」 と、免色は言った。 「何か急なご用件でも......」 「いや別に、ちょっと気になりまして」 「ちょっと気になる......」 私は免色の言葉を繰り返した。 そして、少し怒りの様なものが込み上げてきた

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こちらに向かってきた。私は免色が来る事を少し意外に思えた。免色という人物は、所謂、人との距離間というものを外さない。この場合、時間的なタイミングというべきだが、今、来なければならない何か理由があるのだろう。私は筆を置き、免色を出迎えた。 「村上さん、進み具合はどうですか?」

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こちらに向かってきた。私は免色が来る事を少し意外に思えた。免色という人物は、所謂、人との距離間というものを外さない。この場合、時間的なタイミングというべきだが、今、来なければならない何か理由があるのだろう。私は筆を置き、免色を出迎えた。 「村上さん、進み具合はどうですか?」

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私は新緑に目を奪われ、それが免色の銀のジャガーに映り込んだでいた事で錯覚していたのだ。或いは、ジャガーはブリティッシュグリーンという先入観が私をそう思い込ませていたのかもしれない。いずれにせよ、この土地に免色のジャガーが溶け込んでいる様に見えた事に変わりはない。免色は車から降りて

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私は新緑に目を奪われ、それが免色の銀のジャガーに映り込んだでいた事で錯覚していたのだ。或いは、ジャガーはブリティッシュグリーンという先入観が私をそう思い込ませていたのかもしれない。いずれにせよ、この土地に免色のジャガーが溶け込んでいる様に見えた事に変わりはない。免色は車から降りて

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であり、つまりは私自身が求めたものだ。遠くで聞き覚えのあるエンジン音がこの部屋に近づいて来て、そしてその音は家の前で止まった。免色の磨き込まれ汚れ一つ無い銀色のジャガーは低い西陽に照らされ、そのボディー鏡面はオレンジ色に輝いていた。シルバー? そうか、グリーンではなかったのだ。

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Bリーグ審判の一色渉さん 免色渉、と一字違いというだけで勝手にテンションを上げ、試合に敗れテンション下がる 免色さんはものすごく変だけど嫌いになれない 坂本龍一さんがモデルでは?という記事を読んで視覚的には受け入れOK キャラ的にはどうか また読み返して考えてみる

いがらしゆきこ@igarashi5yukiko

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であり、つまりは私自身が求めたものだ。遠くで聞き覚えのあるエンジン音がこの部屋に近づいて来て、そしてその音は家の前で止まった。免色の磨き込まれ汚れ一つ無い銀色のジャガーは低い西陽に照らされ、そのボディー鏡面はオレンジ色に輝いていた。シルバー? そうか、グリーンではなかったのだ。

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と引き渡したくなかったのかもしれない。私は下絵を済ませ、パレットに凡ゆる色の絵の具を並べた。彼女の僕に対してのプロファイルは、自分自身をこのキャンバスに表現する為に大いに役に立った。明日の朝を待たずに、<私の中の騎士団長殺し>は終結するだろう。自画像を描くことは、顔の無い男の要求

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行動も、彼自身の社会的な義務や責任を担う為の計算された行いではなく、極めて人間的な愛が原動力になっている。人間は利己的で弱く汚い生き物だ。免色の様に生きられたらどんなに人生は楽だろう。私はどこか心の奥底で、そんな免色という人物を受け入れたくなく、そしてまりえを彼のもとへ済んなり

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そう、免色を客観的に見れば、私と比べ極めて常識的な人物だ。それに、物事を曖昧にみる私の様な性格とは真逆で、冷静に現実を直視し、何かを成し遂げる為には自分に妥協を許さない徹底した強い意志の持ち主だ。だからあれだけの富を築いたのだろう。それに、まりえに対しての異常と思われる徹底した

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そう、免色を客観的に見れば、私と比べ極めて常識的な人物だ。それに、物事を曖昧にみる私の様な性格とは真逆で、冷静に現実を直視し、何かを成し遂げる為には自分に妥協を許さない徹底した強い意志の持ち主だ。だからあれだけの富を築いたのだろう。それに、まりえに対しての異常と思われる徹底した

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「そろそろ帰らないと」 「ところで、免色さんのプロファイルっていうのは......」 「そんなものは無いわ」 「僕のプロファイルをありがとう」 「元気でね。頑張ってね」 「うん、元気で。君の幸せを願っている」 私は赤いミニクーパーが見えなくなるまでそれを眺め、それから、アトリエへ向かった。

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返信先:@rate7moka免色さんとまりえちゃんも出てきたかな🤔 集大成的なストーリーだね! 絵画好きにもたまらない作品だよね😊

まる@本とウイスキーと音楽と@frebullmaru221

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「そろそろ帰らないと」 「ところで、免色さんのプロファイルっていうのは......」 「そんなものは無いわ」 「僕のプロファイルをありがとう」 「元気でね。頑張ってね」 「うん、元気で。君の幸せを願っている」 私は赤いミニクーパーが見えなくなるまでそれを眺め、それから、アトリエへ向かった。

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「何が言いたいのかな?」 「社会性がなく、感覚を信じ常識に囚われない事も芸術家の必要な要素よ」 「そうだね、自分の思い描く世界と現実世界の論理との間のズレに悩んでいる。その為には偽ってでも正当化するしかないんだ」 「あなたを見ていると危うさを感じるの」 「話してくれてありがとう」

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描こうではないか。そう、私の肖像画を描けばいいのだ。私はこの三年間、肖像画を描き続けてきた。そしてこの仮説に対しても、今朝、免色の顔を見てから自信から確信へと変わった。私は肖像画を描く時と同じ様に、雨田画伯の心の内側を知った。今回は免色の心の内側を知る事となるだろう。そして私自身

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免色に対しても、何かモヤモヤとした感情を抱いてきた。雨田画伯のストーリーが、私のストーリーへと遷り、そして免色のストーリーへと心の隙間に入り込むように闇のルートが繋がって来た様にも思える。そして、私が取引をした事によって顔の無い男が私の前に現れ、肖像画を描けというのなら、男の望み

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免色に対しても、何かモヤモヤとした感情を抱いてきた。雨田画伯のストーリーが、私のストーリーへと遷り、そして免色のストーリーへと心の隙間に入り込むように闇のルートが繋がって来た様にも思える。そして、私が取引をした事によって顔の無い男が私の前に現れ、肖像画を描けというのなら、男の望み

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を擦り合わせた。免色は直接的にこの不思議な出来事に何も絡んではいないし、それどころか、私は彼に助けられてきた。ただ、顔の無い男はどこか免色を感じるし、現実世界のキーになる所では、常に免色がいた。非の打ちどころの無い免色に、逆に何か裏があると思えるのは、私の思い過ごしなのだろうか。

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を擦り合わせた。免色は直接的にこの不思議な出来事に何も絡んではいないし、それどころか、私は彼に助けられてきた。ただ、顔の無い男はどこか免色を感じるし、現実世界のキーになる所では、常に免色がいた。非の打ちどころの無い免色に、逆に何か裏があると思えるのは、私の思い過ごしなのだろうか。

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私はここで顔の無い男と出会って以来、この男の事をこの三年、ずっと考えていた。それは勿論、意識的に、或いは無意識のうちに考えを巡らせていた。私はあの暗黒の世界の中で自分自身に勝ったのだ。私は確かにあの男と取引をした。ただ、それが何だというのだ。あの奇怪な出来事の後、まりえとその経緯

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冷蔵庫の隣のコーヒーメーカーや電子レンジのある棚には、ウイスキーがあった。ワイルドターキー101とジョニーウォーカーの黒ラベルだった。いずれも三千円前後のものだが、価格といいチョイスといい免色の絶妙なバランス感覚を感じた。免色と何度かここでウイスキーを口にしたが、安い酒であったし、

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私は冷蔵庫を開けた。食材がぎっしりと詰め込まれていた。一番上の棚の手前にはタッパーに入ったゆで卵と、またその隣の同じ形のタッパーにはカットしたキュウリやレタスが入っていた。その奥にはハムやシーチキンという物もあった。恐らく笙子はサンドイッチを作るための仕込みをしておいたのだろう。

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おいて、レスポンスの良いジャガーの強力なV8エンジンは、一度、アクセルを踏み込めば、猛獣の様な唸り声をあげ、鉄分の含んだこの土地の赤茶けた土の混じるワインディングロードを俊足で駆け抜けるだろう。免色がジャガーを愛する理由は、どんな車であるべきかというメーカーの持つ哲学なのだろう。

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地味ではないが派手すぎない。英国人気質というのはどこか日本人と共通する所があり、常に適切な距離感を図る。それは気品や品格を重んじる事にも通じている。そんなV8サウンドなのではとこじ付けてみたが、車とは、そんなバックストーリーは必要な要素だ。尤も、峰々の連なる起伏のある此処の土地柄に

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恐らく、私は唯ならぬ形相をしていたのだろう。 「そのあとに、ゆっくりとさせて頂ければと思います」 と、私は言った。 「ええ、是非そうなさって下さい」 と、免色は言った。 まりえはもっとあれこれと話したかった様だったが、外へ出て行ってしまった。或いは、何かを察知したのかも知れない。

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「村上さん、もし私に気を遣われて1日と言われているのなら......」 「いいえ、1日で描き上げる必要があるからです。勿論、急用などはありません」 「それは......」 「それは、明日の朝までに描き上げ、その理由を全てお話しいたします」 「......わかりました」 まりえも笙子も押し黙っていた。

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免色さんがたすけてくれる?

すず@suzuyus

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免色さんがレコードも揃えたの」 「棚を見て驚いたよ」 私は免色の顔をチラリと見た。 「ええ、まあクラッシックとジャズを中心に有名どころだけです」 と、免色は答えた。 「ところで、一週間分ぐらいの食材は冷蔵庫にストックしておいてあります。勿論、ウイスキーも」 「何から何まですみません」

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「ねえ先生、すごいでしょ、この家」 「ああ、ビックリしたよ」 「絵の具もみんな揃ってる」 「まりえさんは絵を続けるの?」 「勿論よ」 「それはいいね」 「東京の美術大学に行く予定」 「そうなの?」 私は免色や笙子の顔をそれとなく見回した。 「だから先生、その時はよろしくね」 「わかったよ」

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「ねえ先生、すごいでしょ、この家」 「ああ、ビックリしたよ」 「絵の具もみんな揃ってる」 「まりえさんは絵を続けるの?」 「勿論よ」 「それはいいね」 「東京の美術大学に行く予定」 「そうなの?」 私は免色や笙子の顔をそれとなく見回した。 「だから先生、その時はよろしくね」 「わかったよ」

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私は非現実的な異世界に迷い込んだ様な錯覚に陥った。と同時に、免色のある種の狂気に満ちた性質を思い出した。そう、そしてこのアトリエが私の闘いの舞台になるのだと思うと、身が引き締まった。 「コーヒーをどうぞ」 と、リビングで笙子の声が聞こえた。 「さあ、行きましょう」 と、免色は言った。

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私は非現実的な異世界に迷い込んだ様な錯覚に陥った。と同時に、免色のある種の狂気に満ちた性質を思い出した。そう、そしてこのアトリエが私の闘いの舞台になるのだと思うと、身が引き締まった。 「コーヒーをどうぞ」 と、リビングで笙子の声が聞こえた。 「さあ、行きましょう」 と、免色は言った。

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「さあ、どうぞ」 私は免色について行った。 「このリビング、そして、こちらのアトリエ、どうですか」 と、免色は尋ねた。 「すごい! 驚きました」 と、私は言った。 「車のレストアの様に、オリジナルに拘りました」 と、免色は言った。 「全て記憶にある風景と同じです。ただ、全てが新しい」

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「さあ、どうぞ」 私は免色について行った。 「このリビング、そして、こちらのアトリエ、どうですか」 と、免色は尋ねた。 「すごい! 驚きました」 と、私は言った。 「車のレストアの様に、オリジナルに拘りました」 と、免色は言った。 「全て記憶にある風景と同じです。ただ、全てが新しい」

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「急を言ってすみません」 私も右手を差し出した。 そう、免色の固く強い握手だった。 「いいえ、逆に嬉しくてたまりません。こんなに早く村上さんにお会い出来るなんて」 と、免色は言った。 「お久しぶりです。さあ、中に入って」 と、笙子が言った。 私は笙子に免色に言った同じ言葉を繰り返した。

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「急を言ってすみません」 私も右手を差し出した。 そう、免色の固く強い握手だった。 「いいえ、逆に嬉しくてたまりません。こんなに早く村上さんにお会い出来るなんて」 と、免色は言った。 「お久しぶりです。さあ、中に入って」 と、笙子が言った。 私は笙子に免色に言った同じ言葉を繰り返した。

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玄関の前には、深い緑色のジャケットを着た何か憑き物が落ちた様な柔和な表情を浮かべた免色が立っていた。免色に寄り添うように、その少し後ろで笙子の会釈する姿があった。バブアーのオイルジャケットの僅かな匂いと、新築の木の匂いが鼻を掠めた。 「お久しぶりです」 と、免色は右手を差し出した。

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玄関の前には、深い緑色のジャケットを着た何か憑き物が落ちた様な柔和な表情を浮かべた免色が立っていた。免色に寄り添うように、その少し後ろで笙子の会釈する姿があった。バブアーのオイルジャケットの僅かな匂いと、新築の木の匂いが鼻を掠めた。 「お久しぶりです」 と、免色は右手を差し出した。

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「先生!」 「まりえさん?」 「そうよ、三年経って忘れたの」 「いや、大人っぽくなったね」 「さあ、来て」 「あ、ああ」 「すごいでしょ、この家」 「何も変わらない様に見えるよ」 「早く」 「うん」 「実はね、私の家にするの」 「えっ」 「免色さんは知ってるの?」 「冗談よ」 「さあ、早く」

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