#原口統三　が二十歳で逝った頃　私は生をうけた 彼の考えた自分の墓碑銘は 『ここに 悩みなき乙女等の幸ひを祈りつつ世を去りし 素朴なる若者眠る』 であるが、彼が逝くときに残した言葉は 『さて今日、僕はいかなる記念碑とも関りはない』 私は墓碑銘はおろか墓石も残さない

フランス文学者の橋本一明先生は「雨の日は大学に行かない」というスタンスだったそう。ちなみに彼は原口統三の詩才に触れて晩年まで詩を書かなかったのだが、今残っている最晩年の詩がとても好きです。

「報いはない」 悪魔はどこまで行っても、この言葉を囁くのだ。 「救いはない」 僕の胸はたえずこの声にしめつけられる。 「頌歌はない」 寂寥は至る所で僕を待ち構えている。 「勝利はない」 だからと言って、僕が敗北したと、だれが言えよう。 "原口統三『二十歳のエチュード』

産経朝刊7P、満州文化物語 "芥川賞作家と自死した後輩"　文化部編集委員 喜多 由浩。清岡の帰郷には同行者がいた。大連一中、一高を通じた後輩の "原口統三"。奉天や大連で少年時代を過ごした原口も、満州の地に強い思いを抱いていた。原口は敗戦後、逗子の海で入水自殺。19才だった。