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◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇27日　阪神7―3中日（甲子園） 　雨のセーヌ川で、華々しく五輪が開幕した。パリでの開催は100年ぶり。前回の閉幕は7月27日だったと知った。その5日後の8月1日に開場したのが甲子園大運動場である。1924（大正13）年。干支で縁起のいい甲子（きのえね）にあたることからその名がついた。 　職業野球が産声を上げたのはその12年後。中日も戦前から戦ってきたが、やはり甲子園といえば高校野球のイメージが強い。そして甲子園の歴史は、敗者が紡いできた。 　仁村徹（上尾高）は、9回2死から同点2ランを浴び、延長戦で屈した。打たれたのはのちにチームメートとなる牛島和彦（浪商）。試合前に監督から「牛島には気を付けろ」と言われていたが、そこまでの3打席を完璧に抑えたことで「油断」が芽生えた。試合後には「これを弟に」とウイニングボールを渡された。「ああ、この男には勝てなかったはずだ」と悔しい負けを受け入れた。 　音重鎮（星稜高）は「史上最高の試合」と言われる箕島戦に、1年生ながら先発出場した。延長戦に入り、2度も勝ち越したがいずれも2死からの同点弾を見送った。 　「1球で変わる。相手がすごかった。バットを振ったから。振らなきゃホームランも生まれない。それがあの試合から学んだことです」 　井端弘和（堀越高）は降雨コールド。当時は継続試合もなく、最後の整列も土を持ち帰ることもできず終わった。 　「史上最高の打撃戦」に先発したのは高島祥平（帝京高）だ。強打の智弁和歌山相手に、1年生右腕は早々にKOされた。しかし、4―8の9回に、何と一挙8得点。ところが裏に5失点。 　「正直、勝ったと安心した。ずっと負けたら自分の責任だと思っていたから…。地獄と天国、そして地獄を味わった試合でした」 　甲子園には魔物がいると言われている。1球の怖さ。勝ちきる難しさ。甲子園は100年間、敗者に人生とは思うに任せぬものだと教え続けてきた。元球児のプロに、常に勝てとは求めない。だけどどんな時も熱く戦い、グッドルーザーであれ。スタンドにはチケットを買い、声をからしてくれるファンがいる。

中日スポーツ-2日前