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第106回全国高校野球選手権宮城大会が6日、開幕した。楽天モバイルパーク宮城で開会式があり、59チームの選手らが元気よく行進した。開幕カードとなった佐沼―白石工では、白石工が佐沼を3―1で破り、早速、2回戦に駒を進めた。 　選手らが行進中、スタンドに集まった仙台一、仙台二、多賀城、利府、仙台、仙台青陵の吹奏楽部約160人が演奏した。吹奏楽部による開会式の生演奏はコロナ禍を経て5年ぶりで、熱戦の始まりを盛り上げた。 　選手らの行進で先頭となったのは、昨年の宮城大会で優勝した仙台育英。行進後、宮城大会の優勝旗を返還した。（吉村美耶） 　　　　　◇ 　「見ていてください、全力で野球をする姿を。見せましょう、最後まであきらめない姿を」――。古川学園の青沼佑真（ゆま）主将は選手宣誓で、そう力を込めた。 　発生から13年余りが経った東日本大震災にも触れた。「幼かった私たちに夢、希望、勇気を与えてくれたのはスポーツの力」と強調した。 　チームメートから入れたい単語を募り、クラスメートの前で20回以上練習して臨んだ。元日に起きた能登半島地震の被災者に、今度は自分たちが全力で野球をする姿、あきらめない姿を見せることで、勇気を届けるとの思いも込めたという。 　宣誓後の取材には「かまずに大声で言えたので、120点満点です」と笑顔を見せた。（岸めぐみ） 　　　　　◇ 　始球式では、仙台商や石巻商などで監督を歴任し、高校野球の指導者へ贈る今年度の育成功労賞を受賞する東北生文大高校副校長の水沼武晴さんが投手を務めた。石巻商の教え子たちからもらったという、受賞祝いの赤いグラブで直球を投げた。力強い投球を目の当たりにした観客からは、歓声が上がった。 　捕手と打者は東北生文大高校野球部長の佐藤光也さんと監督の伊藤久志さん。ともに水沼さんの教え子で、佐藤さんは2012年の石巻商主将、伊藤さんは00年の仙台商主将だ。 　「全部つながってんだ。24時間、練習なんだ」。伊藤さんは水沼さんのそんな言葉が印象的だという。同じ教育者になり「なるほどな」と思うようになったという。 　開会式の様子を眺めていた水沼さん。球児だけでなく、審判や吹奏楽部員、保護者ら多くの人たちの姿が見えた。「ああ、こうやって高校野球は支えられていたんだな」と一言。「光栄でした」と話した。（吉村美耶） 　　　　　◇ 　後輩に上の景色を見せたい。勝たせなきゃエースじゃない――。佐沼の及川悠輝（はるき）主将（3年）はそんな思いで、開幕戦に臨んだ。だが、勝機を生かした相手の攻めに押し切られた。 　実は、元々は捕手だ。それも、小学生の頃からずっと。佐沼に入っても続け、昨夏は2番を背負った。一方で、投手も少しずつ始め、代替わり後すぐの秋の県大会では途中登板した。だが、1勝もできずに敗退した。 　「悠輝、お前最初から投げたかったか」。監督からの言葉に「投げたかったです」と返し、投手に本格的に転向することを決意した。 　だが、最初は戸惑った。打者の近くにいる捕手とは異なり、マウンドから投じる投手は打者と向き合ったときの距離感がまるで違う。投手としての場数をこなし、徐々に感覚を身につけた。「とにかく勝ちたい」。仲間と日々努力を続けた。 　そしてエースとして迎えた最後の夏。自信をもってストレートで押し続けた。打線も粘り、八回に1点を返したが、及ばなかった。「一緒に野球やってくれて、ありがとう」。来年は後輩に勝ってほしい。（吉村美耶） 　　　　　◇ 　二回表2死二、三塁。連打で走者が得点圏に進んでも、白石工の佐藤大翔（ひろと）投手は落ち着いていた。打者を遊ゴロに抑え、ピンチを切り抜けた。「守備を信じて自分のピッチングができた」 　白石工は「守備で粘り強く守って相手の隙につけ込むチーム」。五回まで白石工はノーヒット。相手に出塁を許す場面もあったが守り続け、七回に3点を先取した。 　八回には1点を返され、なお2死一塁で四番打者を迎えたが、三振に抑え、相手の反撃の流れを断ち切った。「ピッチャーは感情的になってしまったら駄目」。最後まで淡々と投げきった。 　実は、勉強も試験で学年1位をとる頭脳派。文武両道の夏が続く。（岸めぐみ）

朝日新聞デジタル-2日前