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（14日、第106回全国高校野球選手権兵庫大会3回戦　明石商6―2関西学院） 　「頑張れー！」。関西学院の副主将の内橋朱音（あかね）さん（3年）は、スタンド最前列で誰よりも大きな声を張り上げた。一回に2点を先制すると、何度も跳びはねた。 　部員90人近くの大所帯で、4人いる副主将の1人。 　中学3年のとき、兵庫大会の決勝をテレビで見た。関西学院は神戸国際大付に3―7で敗れたが、諦めない選手の姿に心を奪われた。入学してすぐ入部届を出した。 　練習はグラウンドに一番早く行く。練習のサポートや試合での声出し、スコアの記録に励んだ。。 　昨夏、副主将の1人に指名された。広岡直太監督は「視野が広くて、チームのことを考える力は部員の中でもトップクラス」と選んだ理由を話す。 　「私が副主将になってもいいのか」。内橋さんは聞いて驚いた。それでも「ほかの副主将3人に負けないように、もっと頑張ろう」と思った。 　昨年9月中旬。秋季県大会の3回戦で、関西学院は報徳学園に1―9で7回コールド負け。スタンドで応援していた内橋さんはショックを受けた。 　「頑張っている選手たちを見るだけで、自分は公式戦で役に立てなかった」。試合後、泣いている選手たちに何も声をかけられなかった。 　「私がどんなに頑張っても、チームが強くなるわけではない」と落ち込んだ。敗戦から間もない放課後の練習中。急に涙が止まらなくなった。 　その異変に白石櫂主将（3年）ら3人が気づいた。 　「何があったん？」。練習後、3人は内橋さんに話しかけた。 　「負けてから、自分がチームに必要なのか分からない」と打ち明けた。 　「そんなことはない。内橋はチームに欠かせない存在だ」「いつも一番早く来て、遅くまで残って努力していることは、みんな分かっている」「ほんまにいつも助けられているし、みんな本当に感謝している」などと約1時間にわたり言ってくれた。 　選手にそう思われていることを初めて知り、また涙が出てきた。「自分は必要とされている。もっとチームのために頑張ろう」と思い直した。 　悩んでいる選手には「何かあったん」「最近どう」。調子がいい選手には「良くなってるやん」「めっちゃいいやん」と声をかけた。 　白石主将は「一人一人に話しかけてコミュニケーションをとり、選手たちを引っ張っている。プレーに集中できる環境を作ってくれて、とても助けられている」。 　エースのトーマス・ウィリアム投手（3年）は「細かいところに気づいてくれて、チームで一番大きな存在。内橋のおかげで僕たちがしっかりと野球ができる」と感謝する。 　この日はスタンドから応援。四回に逆転されたが、「ヒットをつないで1点ずつ返してほしい」と祈り、何度もスタンドから叫んだ。 　試合が終わると、タオルで目頭を押さえた。 　球場の外では、泣いている選手たちを「ナイスゲーム」とねぎらった。ミーティングの後、「記念撮影をするから並んで」と選手に指示し、笑顔で写真に納まった。 　「甲子園に行けなかったのは残念だけど、何よりもいい仲間たちと巡り合えて良かった。副主将を続けられたのも選手たちのおかげなので感謝したい。副主将をしたおかげでチーム全体を見ることができて、成長できたと思います」（森直由）

朝日新聞デジタル-3時間前

＜高校野球兵庫大会：神港橘3－2小野＞◇12日◇2回戦◇明石トーカロ 　金丸先輩、勝ちました！　兵庫大会は春夏通じて17度の甲子園出場経験のある古豪の神港橘が、小野との接戦を逆転サヨナラで制し初戦突破を決めた。エースの中間裕瑛（ひろあき）投手（3年）が、OBで今秋ドラフト目玉候補の関大・金丸夢斗投手（4年）の助言を生かして10回4安打2失点、147球の熱投で劇的勝利を呼び込んだ。元阪急の剛腕、山口高志らを輩出した伝統校が、48年ぶりの夏の甲子園を目指す。 　神妙だった神港橘のエース、中間の表情が一瞬で笑顔に変わった。「絶対に打ってくれるという自信を持って、応援してました」。1点を追う延長10回2死満塁。8番根木沁太（ねぎ・しんた）捕手（3年）が放った打球は左翼線へ伸び、2人の走者が本塁を駆け抜けた。あと1死で高校野球が終わりかけた土壇場。逆転サヨナラ打を放った相棒に、中間もベンチを飛び出して喜びを爆発させた。 　最後まで仲間を信じた。1点リードを守りながら8回まで無失点も9回に同点打、延長10回に勝ち越し打を許した。だが逆転を疑わず、それ以上の失点は許さなかった。10回を4安打、147球の熱投で劇的な初戦突破を呼び込んだ。 　4学年上、日の丸も背負う大先輩の助言を生かした。3月の侍ジャパンに選出された関大金丸は神港橘OB。卒業後も母校の練習に何度も顔を出し、そのたびに技術面や精神面でアドバイスをもらってきた。特に効果てきめんだったのが、投球時の呼吸法だ。「力むといいボールが投げられないので、金丸さんから聞いた『腹圧』を意識して投げました」。おかげで「キレが上がった」と進化を実感し、感謝は尽きない。 　「腹圧」を意識する方法について「息を吸って、吐いた時の力をずっとためておくみたいな感じで、リリースの時にもう1回（おなかに）力を入れると、リリース位置がさらに前に行って、球に回転が加わるようになります」と説明。完全習得は先だが「できた時は一番いいボールがいきます」と手応えを感じている。 　金丸は兵庫大会開幕の約2週間前にも練習に顔を出し、激励してくれた。先輩の高校3年時は、コロナ禍で夏の甲子園大会が中止となった。「悔しい思いをされたと思う。その分僕たちが金丸さんの代の思いも背負って連れていきたいです」。阪急で一時代を築いた山口高志ら名投手を輩出する伝統校。古豪復活で1976年（昭51）以来48年ぶりの夏の聖地を目指し、3回戦で神戸国際大付と対戦する。【古財稜明】 　◆中間裕瑛（なかま・ひろあき）2006年（平18）5月16日生まれ、兵庫県神戸市出身。幼稚園年長の5歳から小部東アローズで野球を始め、小学生時も所属。鈴蘭台中では学校の軟式野球部に入部し、捕手から本格的に投手に転向。神港橘では1年秋から背番号10でベンチ入り。2年秋から1番。176センチ、69キロ。右投げ右打ち。 　◆神港橘　1907年（明40）に私立神港商として創立。1910年（明43）に市立神港商となり、1921年（大10）に市立第一神港商に校名変更。同校名時の1929年（昭4）、30年にはセンバツ史上初の大会連覇を達成。1948年（昭23）に市立湊商との統合や市立神港高などの校名変更を経て、16年に市立神港橘に改称。春夏通じて17度甲子園に出場。主なOBに元阪急の山口高志氏、関大・金丸夢斗ら。所在地は神戸市兵庫区会下山町3丁目16の1。清家豊校長。 　

日刊スポーツ-2日前