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苦しみ抜いた末、夏の1勝は格別だった。広島東洋カープに選手、コーチとして在籍し、昨秋から瀬戸内を指揮する永田利則監督。初戦となった13日の安芸南戦でタイブレークの延長十回、4点差を逆転し、サヨナラ勝ちを飾った。選手を出迎える際には感情がこみ上げ、涙をぬぐった。 　一回に2点を先制し、2―1の三回にも2点を加えてペースを握った。しかし中盤以降、無得点が続くと九回に4―4に追い付かれ、延長戦へ。十回には継投が崩れ、4点リードを許した。消沈してベンチに戻ってきたナインを永田監督は「打つしかなかろう!」と鼓舞。崖っぷちで目覚めたナインは4安打を集中して追い付くと、最後は途中出場の信藤の一ゴロが野選を誘い、劇的な勝利を手にした。 　「こんなはずじゃなかった。自分たちで試合を難しくして。前日の打撃練習でもみんな本当に調子がよかったのに。でも、これが高校野球。最後は全員でつないで勝った」。永田監督は喜びをかみしめた。 　1980年、広島商からドラフト2位で広島入団後、生きてきたプロの世界。高校生の選手にはコーチとして間近で接してきた。「鉄人」金本知憲氏、現広島新井貴浩監督の猛練習ぶりを伝え、「やればできるんよ。今までやってきたことしか試合ではできん」と選手を励ましている。 　春夏通算5度の甲子園出場を誇る瀬戸内を率いる重圧もある。「初戦で負けていたら大変なことになっていた。でも次の試合から気は引き締まる。勝ってよかった。試合を重ねていくことで私も分かっていくことがある」。62歳の新監督は一戦ずつ、選手とともに成長を誓う。

中国新聞デジタル-11時間前

◆第１０６回全国高校野球選手権秋田大会▽２回戦　金足農３―２明桜＝延長１０回タイブレーク＝（１０日・さきがけ八橋） 　秋田では、２０１８年夏の甲子園で準優勝し“金農旋風”を巻き起こした金足農が明桜との初戦に臨み、延長１０回タイブレークの末、３―２で競り勝った。当時のエースだったオリックス・吉田輝星投手（２３）の弟で、２年生エースの大輝が先発し、１０回を５安打２失点、１１奪三振で完投。 　三振を取るたび、ピンチを抑えるたび、吉田は気迫十分の表情で何度もほえた。金足農が第１シードで昨夏代表の明桜を相手にタイブレークを制し、勝利だ。最後の打者を空振り三振に取ると、兄・輝星のように右拳を握り、勝利の雄たけびを上げた大輝は「対戦が決まった時から意識していた。練習の成果が出た試合だと思う」と胸を張った。１０回５安打１１奪三振２失点。１２４球の力投だ。 　最速は１４０キロ台前半だが、７学年上の兄のような伸びのある直球で相手打線を封じ込んだ。「（練習では）全然ダメだったけど、試合になってアドレナリンが出たのかな」と吉田。２―０の７回は３安打で同点とされ、なお２死二塁のピンチ。「もう一回勝つ流れを持ってきたかった」。ここから９回１死まで５者連続空振り三振。ギアを上げて勢いづかせた。 　無死一、二塁から始まるタイブレークでの１０回。味方が１点をもぎ取ると「エースとして絶対抑える」と、２死二、三塁まで迫られながら無失点。中泉一豊監督（５１）も「よく投げてくれた。特に最後は気持ちの入った投球だったと思う」とたたえた。 　吉田は帽子のつばに「夢」「恩返し」「天下」と記している。「夢は、小さい頃から甲子園の舞台で投げること。恩返しは、（主将の高橋）佳佑さんに誘われて入学したので一緒に甲子園に行きたい。天下は、兄に買ってもらったグラブに勝手に刺しゅうが入っていて、天下を取るんだと思って」と思いを込めた。 　昨秋は県大会優勝＆東北大会８強も、今春は県大会初戦敗退。ノーシードから頂点を目指し、最高のスタートを切った。輝星がエースとして準優勝した１８年夏以来となる甲子園出場に向け、弟エース・大輝を中心に再び“金農旋風”を巻き起こす。（有吉　広紀） ◆ミラクル金農めも 　▽８４年夏　甲子園に初出場。初戦は名門・広島商と対決。下馬評を覆し、６―３で勝利すると、４強入り。準決勝では２年生のＫＫコンビを擁するＰＬ学園と勝負。２―１の８回１死から桑田真澄に逆転２ランを浴び、惜しくも敗れた。 　▽１８年夏　エース・吉田輝星を擁し、３回戦で横浜に５―４で逆転勝利。準々決勝・近江戦では９回裏に斎藤璃玖遊撃手が逆転サヨナラ２ランスクイズを決め、３―２で劇勝。決勝で大阪桐蔭に敗れたが、秋田勢１０３年ぶりの準優勝。“金農旋風”と呼ばれ、社会現象になった。

スポーツ報知-3日前