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◆第106回全国高校野球選手権福岡大会準々決勝　近大福岡1―0九州国際大付（20日、北九州市民球場） 　近大福岡が3年連続の代表を狙った九州国際大付を撃破した。2002年の創部以来、初の4強入り。「上出来というか、最高ですね」。新たな歴史を築いた肘井利一監督（54）は思わず声を上ずらせた。 　182センチ、71キロ。細身のエース右腕がマウンドで仁王立ちした。被安打2で完封した田邊周（3年）だ。初回に挙げた「スミ1」を134球の熱投で守り抜いた。準々決勝で東筑に3―10で敗れた昨夏は先発し、序盤の大量失点で試合を壊した。「（疲労で球速が）130キロ以上の球を1球も投げられませんでした」。体力不足を痛感した右腕はスピン量が多い真っすぐを投げられるようにポール間走で体幹を強化。この日の最速は自己最速の141キロに及ばない130キロ台後半ながら、球速以上に伸びを感じさせるストレートで相手の強力打線に立ち向かった。 　「相手に試合をコントロールされることなく、コントロールする」。肘井監督が掲げるテーマを実践したのも、主将でもある田邊だった。1点リードで迎えた8回2死二塁。今大会2本塁打をマークし、初回にも中越え二塁打を放っている注目の1年生スラッガー、牟禮翔を内角の真っすぐで空振り三振に切って取った。その前の6回の対決では、スライダーを空振りした2球目のスイングから「真っすぐを狙っているように感じたので」と、同じ球種でバットに空を切らせた。冷静な観察眼に加え、心のコントロールも光った。 　チームの方針で、近大福岡では主将が背番号「10」をつける。不動のエースながら、田邊が「1」ではないのはそのためだ。新チームをスタートさせた時点で肘井監督は、口数が多くない田邊にあえて大役を任せるつもりだったという。「彼は自分のことをしっかりやって背中で引っ張るタイプ。足りないことを、みんなで補っていこうと」。だからといって、最初から指名するのではなく、当初は3年生全員に日替わりで経験させた。役割や大変さを共有するためだった。 　この日、リードは最少の1点でも田邊は孤独を感じなかった。無失策の堅守に加え、バックが声でも盛り上げたからだ。「周りが『同点まではOK！』とか、背中を押してくれました。本当に心強かったです」。準決勝の相手は西日本短大付。「自分がゼロに抑えて、後半勝負に持ち込みます」。田邊が誓った。零封勝利2試合の後は、3試合連続の1点差勝利。接戦に強いのは、大黒柱を中心にチーム一丸となっている証しだ。（西口憲一）

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＜高校野球福岡大会：近大福岡1－0九州国際大付＞◇20日◇準々決勝◇北九州市民 　近大福岡が大会連覇中の九州国際大付を下し、初の夏4強入りを決めた。先発の最速141キロ右腕、田辺周（しゅう）主将（3年）が9回2安打無失点。初回の1点を守り切る“スミ1完封”で8奪三振。134球の力投で春夏通じて初の甲子園出場へ、あと2勝とした。福岡大若葉は創部6年目で初の準決勝進出を果たし、22日に福岡大大濠との「兄弟校対決」が実現する。西日本短大付も勝ち上がり、福岡大会4強が出そろった。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　息詰まる緊張から解き放たれ、田辺は右手を突き上げた。自然と笑みがこぼれた。 　「ベスト4に入れたのが素直にうれしい。相手は3連覇がかかっていたので、気負うことなく勝負をするつもりだった」 　9回2死。最後は一ゴロに封じ、自らで一塁ベースカバーに入った。昨夏王者の九州国際大付打線を9回シャットアウト。134球の熱投で、わずか2安打に封じ込んだ。計5四死球も「気持ちで」。再三の得点圏でギアを上げ、ホームは踏ませず。初回に挙げた虎の子の1点を死守した。 　「ここで点を取られたら去年の自分と一緒だなと思った」 　脳裏をよぎったのは昨夏の準々決勝だった。東筑戦に先発し、2回を6失点。チームも敗れ、当時2年生ながら責任を背負った。 　「今年は自分が勝たせないといけないと思って」 　その一心で右腕を振った。4回以降は先頭打者を全て断つ好リズム。うだる暑さの中、集中力を切らさなかった。攻撃中はベンチ奥で涼み、クエン酸の栄養剤、ゼリーでエネルギー補給。万全の状態で毎回マウンドに上がり、スコアボードに0を並べ続けた。 　「少しは晴らすことができたかな」 　過去の悪夢を振り払う快投劇で、チームを初の夏4強へ導いた。 　肘井利一監督は「うちは田辺のチームなので。自分のことをしっかりやって、背中で見せてくれました」と評した。 　春夏通じて初の夢舞台へ、手の届くところまできた。「必ず福岡大会で優勝して、甲子園で1勝したい。自分がやってきたことを信じて、無失点に抑えていければ」。頂点のみを見据え、残り2試合を戦い抜く。【佐藤究】 　◆田辺周（たなべ・しゅう）2006年（平18）9月19日生まれ、福岡県飯塚市出身。小学1年でソフトボールを始め、飯塚鎮西中では軟式野球部に所属。近大福岡では3年春から主将を務める。好きなプロ野球選手はドジャース山本由伸。182センチ、71キロ。右投げ左打ち。 　

日刊スポーツ-1日前