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◆全国高校野球選手権2回戦　神村学園4―3中京大中京（15日・甲子園） 　背中に背負ったエースナンバーが誇らしげに揺れていた。神村学園（鹿児島）のエース今村拓未（3年）が134球を投げて完投。初戦の木更津総合（千葉）戦に続き2試合連続完投勝利をあげた。「監督からは投げられるまでと言われていたけど、自分は完投するつもりでした。完投できて良かったです」。9回は2死から1点差とされたが最後の打者を左飛にうちとりグラブをたたいてほえた。 　3回、4回と失点し2点ビハインドで前半を折り返した。連打を許さず踏ん張るエースを6回に打線が援護。上川床勇希（3年）の適時打などで反撃し同点として、2死三塁から勝ちこしの適時打を放ったのは今村自身。中前へはじき返して勝利を引き寄せ「追いかける展開になって精神的にきつかったけど、6回は野手が頑張ってくれた。自分も変化球を狙って思い切り打ちました」と勝ちこしを決めて投球もギアが上がった。 　昨夏の甲子園で悔しさを味わったのも2回戦のマウンドだった。市和歌山戦で先発した今村は3四死球を出して2死満塁のピンチを作り、わずか2/3回でマウンドを降りた。「甲子園の悔しさは甲子園で返すしかない」。1年後、夏の甲子園のマウンドに戻り2試合連続完投を果たし悔しさを晴らした。 　1年間の成長を今村自身は「冷静を保てるようになって精神面で成長した」と話す。選抜大会後は調子が上がらず公式戦のベンチを外され、一人で夏に向けて体作りから始めた。持ち味の直球を簡単に打ち返され「体のキレがない」とダッシュや体幹トレーニングなど、チームとは別メニューを一人でこなした。練習でも妥協は一切しなかった。「一人で練習したことや、選抜大会できつい場面で救援登板したことで強くなったと思います」。昨夏、好救援でチームをベスト4まで引き上げた左腕の黒木陽琉（亜大）からは「ピンチの時ほど熱く冷静に」という言葉をもらった。この日、最終回のピンチもその言葉を胸に「細かいところに逃げの投球をしたら打たれる。ゾーンで勝負しよう」と冷静に考えて打たせてとった。「今村のいいところはポーカーフェースで淡々と投げるところ。真のエースというか、1試合を任せられるようになってきた」と小田大介監督も今村をエースとして信頼している。 　中京大中京（愛知）とは2013年に小田監督が就任してから毎年練習試合を行ってきたが1度も勝てていなかった。「ずっと相手をしていただいたのに勝てなくて。やっと勝てました」。最高の舞台で悲願の勝利を手に入れた小田監督は試合後、涙をにじませた。 　「昨年の悔しさは忘れて次の試合からはチームのために集中したい」。頼もしいエースとなった左腕が2年連続8強進出を狙うチームの支えとなる。 （前田泰子）

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エースになるための“絶対条件”があった。第106回全国高校野球選手権大会は15日に大会第9日が行われ、第1試合で神村学園（鹿児島）が中京大中京（愛知）に4-3で勝利した。先発を任された今村拓未投手（3年）は134球を投げ、8安打3失点の粘投で9回を投げ切った。そこには完投にこだわった深い理由が隠されていた。 　樟南との鹿児島大会決勝、木更津総合（千葉）との1回戦に続いての完投勝利。エースの名にふさわしい活躍を見せている今村だが、ここまでは苦しい時期が長かった。昨夏の甲子園では市和歌山との2回戦に先発も、1回持たず降板。今春の選抜大会ではリリーフに回った。その後の九州大会ではメンバーからも外れた。 　調子の上がらない左腕を見て、小田大介監督は夏までの3か月間で“ある条件”を与えた。「『完投できる体力、気力を付けられないと夏のメンバーに考えていないから』とはっきり伝えました」と、あえて厳しい言葉を投げかけて奮起を促した。それほど完投にこだわったのは「甲子園で勝つには、今村しかいないと思っていたから」と明かした。 　今村はこの“通告”からの3か月を「とてもきつかった」と振り返る。全体練習に入るのはノックくらいで、その他の時間は、自分で考えた体幹中心のメニューをひとりで黙々とこなした。練習試合での登板はあったが「まだまだ信頼されていないと感じる時期もありました」と本音を漏らす。 　苦しみながらも努力は実を結んだ。練習試合などで結果を残し、背番号「1」を勝ち取ると、鹿児島大会では20回2/3を投げて無失点。決勝では完封し、成長をした姿を見せた。この日も粘り強く投げ、134球で完投した。 　この成長に小田監督は「信頼しかしていませんよ。彼がその3か月を本当に頑張った証拠だと思うので、エースとして頑張ってほしいと思います」と笑顔で感謝を口にした。 「完投は監督さんに信頼されている証拠なので嬉しいです」。今ではあの3か月に感謝している。悔しさを自信に変えたエースは「次の試合も完投します」と力強く宣言した。

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