動画検索
関連広告
検索結果
曲げたる肱の高枕 実に一瓢の楽しみの 眠りを覚ます山颪
山樵「アアラ怪しやナ、客星ここにたんだくなし、我が盃中に影さすは、さては一定人傑の、この山中に有りという、天の知らせか何にもせよ、奇異なる事を見る物じゃナア。ハハアこれで読めた。心当たりは山住の、女が連れるいつもの小僧、ドリャ一服喫んで待つべえか」
山樵「オオ阿母、今日はまだ逢いませぬの」
アアおとましとかこち言 それと見付けて
足の冷たいに草履買うてたもれ 子とろ子とろ
木の根笹原潜りくぐって ひょいと出たみどり子
怪童「かか様何ぞ下されや」
千声万声の砧に合わす鼓の拍子
山姥「母が囃してやりましょう」
怪童「十三七つ」
母の胎内蹴破って 産所も産湯も山なれば
山樵「何と言うた」
山姥「これはしたりどうしたもの また山廻りの話をして 聞かせましょうわいな」
浮き立つ空の弥生山 桃が笑えば桜がひぞる
露の玉章落ち染めて
菖蒲葺く間に盆の月 待宵過ぎて菊の宴
山樵「 先程より心をつけて窺うところ さては柔弱非力を恥じて 横死を遂げし
山姥「こりゃ怪童 力の程が見たいとおっしゃる 必ず殿に負けまいぞ」
にっこと笑って立ったりしは 人も恐るるばかりなり
中よりふっつとねじ切って 左右へ分かれて立ったりしは
怪童「そんなら俺は侍になるのか 嬉しい嬉しい」山姥「嬉しゅうのうて なんとしょう」
さぞ面影の懐かしかろ 頼光公へ御奉公
山姥「今別るるともこの母が」
思わずわっと一声が 木魂に響きて哀れなり
塵積もって山姥となれり 山また山に山廻りして 行方も知れずなりにけり