地球に貼られた「差し押さえ」の紙の下から、人間どもがわらわら出てくる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

蚊の間で「嘘つきの人間の血は美味い」と話題になっているそうなので、今夏は正直に生きる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

恋人の遺書の最後に、「この遺書で鼻をかむように」と書かれていたので、裸になって、冬のベランダに出た。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

病床の大臣は、枕元の千羽鶴の中に仕掛けられた盗聴器に向かって、自身の死期についてとうとうと語り始めた。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

その店のたい焼きは、四本の脚全部の先までたっぷりあんこが入っている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

人魚のアナウンサーは雨の予報についニコニコ笑ってしまう。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

月面探査機が、ハイハイをする赤ん坊とすれ違った。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

安売りのトマトに絆創膏が貼られていて、ガーゼ部分に赤い液体が滲んでいるが、血なのか果汁なのかわからない。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

ある日、町の電器屋に、婆さんが、「芸能人が笑わないのよ」と、テレビを持ってきた。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

海女だった祖母が、夜の海で一人、水面に映った満月を獲ろうとしている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

表に昔の恋人たちの名を、裏に彼らの命日を書いた単語カード帳を、不老不死の女が静かにめくっている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

天使たちを乗せたバスと、悪魔たちを乗せたバスが、同じ戦場へ向かって出発した。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

造船所をクビになった男が、日がな一日、笹舟を作って過ごしている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

俺と同じ房にいる雪だるまは、春、この刑務所を出所できる予定だそうだ。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

銀河全域に迷子のお知らせが流れる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

消費期限の日付が娘の命日と同じ豚肉を見つけた主婦が、スーパーの精肉売場に立ち尽くしている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

その文房具屋の店主の婆さんは、詩人に絶対に消しゴムを売らない。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

猫の夢を見ながら眠る飼い主の頭を、飼い犬が怒ったようにふんふん嗅いでいる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

箪笥の裏に掃除機を突っ込むといつも一、二個の歯を吸い込むが、今日は六個ほどの歯を吸い込む音がした。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

特価の林檎は呪いで甘くなっているので、お気を付けてお召し上がりください。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

午後の団地に、お隣の奥さんが、子どもをぶつ代わりに紙風船を潰す音が響いている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

来週の見合い相手だと母から手渡されたのは、また鯨の写真だった。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

今月の家賃が少し足りなかったので、大家のおばさんが、うちの赤ん坊を一時間抱いていった。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

俺の手のひらがヤスリになっていることを知っているはずの息子に「頭を撫でて」と言われる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

「特徴」の欄に「トマトが好物」と書かれた尋ね人のポスターが、野菜の無人販売所の壁に貼られている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

今年は、空から降ってくるあんパンのあんが、つぶあんが多くて、不安になる。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

独房で天文学を勉強し始めた囚人が、独房の窓の小ささを毎夜嘆いている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

ホームレスの老婆が、町じゅうの花屋を巡って、店先に落ちている花びらを拾い集めている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

産婦人科医は、私の妻が産んだサイコロの出目の確率を詳しく調べ、きちんと六分の一だと太鼓判を捺してくれた。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

姉が母の墓石にふりかけた香水を拭き取って、私は私が母に似合うと思う香水を墓石にふりかける。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

そのぬいぐるみは、胸の部分に、薄いガラス製の心臓が入っているため、さびしくても抱きしめられない。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

政府によって国じゅうの禿げが集められた孤島に、育毛剤の雨が降り始める。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

飼い猫がくわえていた鼠の型番をネットで検索し、悪い鼠だと判り、安心する。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

父の魂を迎えに来た天使が、核シェルターの扉を静かに叩いている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

明日は全国的に猫を撫でなければならない日なので、押入から猫の剥製を出しておく。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

亡父の夜会服のポケットから微量の星屑が出てきた。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

夜明けの光を集めた瓶を握りしめ、暗い病室に戻る。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

向かいの車線にいる霊柩車の運転手がめちゃくちゃ笑っている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

鳥居から外に出る瞬間、猫は慌てて四足歩行に戻った。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel

夫に愛想を尽かした妻が、夜中、ベランダに出て、月を誘惑しようと踊っている。 #一文小説 #ショートショート #超短編小説 #マイクロノベル #twnovel