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縮めた歩幅でゆっくりと前を通る。私が住んでいたのは、たしかあの部屋だった。外すのが面倒で置いたままにした窓用エアコンは、まだ残っているのだろうか。そんなことを考えながらぼんやり眺めていた隣の、茶色い扉が徐に開いた。少しだけ空いた隙間から、ひとりの男が出て来る。
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小さな箱を片手に持った男は、欄干にもたれかかるようにすると、取り出した煙草に火をつけた。吐き出された煙が、青い空に溶けて消えていく。ふと目があった気がして、思わず足が止まる。気のせいなんかじゃなく、その視線は私に向いていた。長いまつ毛に縁どられた黒は、懐かしい色をしていた。