フウの名を猫にあたえてお互いがいなくなってもいいようにした　／袴田朱夏 （フウ＝風） #ShukaHakaTanka

しがみつく子のやすらかな水でいるいつかひとりで泳げるまでは　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

「スーパーのおいもになった」田舎から届く土塊を洗い終え子は　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

気を抜くとひとり鏡に映るのがああなりたくはないのああです　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

ゆふぐれにちよつと走つてみたけれど乗り逃した嵐電は大きい　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

くやしいのはおれだ、描くな、吸い取るな、登場人物ではない、やめろ　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

年老いたアムールトラが何の肉かわからぬほどに咀嚼するもの　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

ほっぺたにあたって風じゃなくなってきみの笑顔になって果てるね　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

でも波はきっかけだった二隻行き瀬に立つだけか月は水面で　／袴田朱夏 （でもなみはきつかけだつたにせきゆきせにたつだけかつきはみなもで） #回文 #ShukaHakaTanka

赤毛燃ゆ　愛の時代に許されたサタンマリアの名の悪女あり　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

手をのせてマウスは動く　たいくつを切り拓けないこんな小舟じゃ　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

おはなしをくじら語訳でよむときのざんぶーそれはなみのおとだね　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

舌打ちを許してくれた母さんの小さい背とゆく映画館　／袴田朱夏 （背＝せな） #ShukaHakaTanka

酔えた嘘ついて強いな悲しい詩泣かないよっていっそ歌えよ　／袴田朱夏 （よえたうそついてつよいなかなしいしなかないよつていつそうたえよ） #回文 #ShukaHakaTanka

写真より実物がさらに良きことの我が愛妻とコメダ珈琲　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

最後まで花屋であった廃業のあとに花びらひとつ残さず　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

パン生地もわたしも休む　背中からわたしが先に伸びておきます　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

病欠の子の牛乳を健康な子が一気飲みしてああ世界　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

ライバルが上司になったおめでとうございますってきちんと言えた　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

復興の象徴ばかり増えてゆきむしろ未完の象徴である　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

悔いはない歴代の詩を消して待て時化をしのいだきれいな俳句　／袴田朱夏 （くいはないれきだいのしをけしてまてしけをしのいだきれいなはいく） #回文 #ShukaHakaTanka

光るまえに気づいてほしい　太陽がじぶんの影を見ることはない　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

半径を手足にまかせ側転の子らがフロアをかき混ぜてゆく　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

ひとりではひとりぐらしの惰性には戻れないからあなたをおもう　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

なのはなが空を支えて川岸にきらきらと建つ虫の王国　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

犬だったあなたは夢で人間になったりしない　ありがとう犬　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

感情の総和をゼロにするためにポテトチップス飲むように食む　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

言い過ぎた脳を浮かべて浴槽が首から下を生煮えにする　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

広沢の池に映えれば天地を鏡像と成す二等分線　／袴田朱夏 （天地＝あめつち） #ShukaHakaTanka

園庭はしかと受くるなり三段目からの着地とおさなき自負を　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

わかるからいいよ　木陰のゆたかなる武蔵野にああきみは新婚　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

おろそかなことは豊かだ　無果汁のいちごミルクでかしこく太る　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

切っている別れ　愛しい横顔が今宵死と入れ替わる凍てつき　／袴田朱夏 （きつているわかれいとしいよこがおがこよいしといれかわるいてつき） #回文 #ShukaHakaTanka

想い出を執念色に染め上げて君の背に振る大旗とする　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

午後にしか温まらない家を出て春のひかりに圧されつつ漕ぐ　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

わかるけどあなたなしでも生きられてしまってごめんまた春が来る　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

子を抱けば同じ重さのお米よりこちらを見つめるぶんだけ軽い　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

天国にごはんはあると思うので味付けのりを持たせてください　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka

わたしより不幸な人に会うときのわたしの顔をするなわたしよ　／袴田朱夏 #ShukaHakaTanka