『赤い唾液』 白夜に浮かぶ赤血球は 原型を留める事が出来ず 壁に貼り付いたペンキの様になる 舌が痺れる位絡ませ 八重歯を舐め回したら 人生のクライマックス 涼しい瞳の地平線に 零れ落ちる赤い唾液が 無言で寝言を並べ ぽたぽたと ポタポタと 最期の覚悟が 掌の中で疼いている #いらの世界

『はなさない』 五の倍数の君が 色白の偶数を撫でる時 ビリっとした夕焼けが 心の隅までオレンジに染める 僕らが歩んだ円錐状の道は 何もかも解決しないまま 捻れていく体の 搾りたての香り 思い出は何時でも そうやって脳に貼りつく やがて訪れる暗闇に備えて 僕らは手を繋いだ #いらの世界

『史上最大級のLOVE』 瞬間移動した想いが 太い血管を震わせる 虹色の君の涙も 真似出来ないほど愛おしくて 熱を帯びた私の指は しっかりと心臓を握り締める このままで どうか このままで 宇宙規模の愛が 流星となり線を刻む時 残された傷跡の様に 輝く事を強く望む #いらの世界

『最先端の夜に』 消えかかる雲の遺言が 満月を殺そうとするのに 君は笑顔だ 邪魔な言葉を排除して 残った香りで勝負する 君は悪魔だ 絡みつく手足の様に そびえ立つビルの群れが 一瞬で消える週末の爆風 人類史上最悪の景色も 瞳に焼き付ける事も出来ないまま 想いだけが哀れだった #いらの世界

ボロボロの瞳が転げ落ち バラバラの身体は痛みを通り抜け しゃしゃり出た感情は骨を喰う 善悪のタブレットを 口いっぱい頬張って 神にしがみつく始末 世界の片隅で叫ぼうか 雑音にまみれた紛争が ミュートする様に 人は歩む事も 立ち止まる事も出来る それがどうしたと 罵るのも自由 #いらの世界