疲れたなと時計を見ればもう11時。 さっきから重たい背中を押しのけたら寄りかかっていた体がズルリとソファーに落ちた。 「危ない！」 フニャフニャと何か寝言を言いながら抱き付いてくる体を抱っこした。 待たせてごめんなさい。 でも起きないとイタズラしちゃうかも知れませんよ？ #おはよう兎虎SS

スケジュール帳に新しく小さな赤マルをつけた。 これは一緒に買い物に行く日。 あの人はすぐに忘れてしまうから僕がしっかり覚えておかないと。 人目につきにくいレストランも探しておこう。 夜はどっちかな？ お酒を用意しておいたら家に来てくれるだろうか？ #おはよう兎虎SS

「このチョコ嫌いでしたか？」 「いや、なんか勿体無くて・・・」 「食べないと腐りますよ？」 「そうなの⁈」 食べたらなくなるからなんて、そんな気持ちは何となく分かる。 だから写真を撮って携帯の中に大切にしまっている。 あなたの携帯にも僕のプレゼントフォルダがあるといい。 #おはよう兎虎SS

突き出された拳に思ったより勢いがのっていなかった。 案の定死角から鋭い蹴りが入ってくる。 のけ反って体勢が崩れた。 きっと勝てると思ったんだろう。 おまえの顔にフッと笑みが浮かんだ。 でも残念。 そのままバク転して距離を取る。 俺だってまだまだ負けねぇよ？ #おはよう兎虎SS

ふと手に取ったペーパーバックには色んな線が引いてあった。 あなたのだろうか？ でも定規で引いたのは違う気がする。 夫婦で読んでいたのかも。 ああ、この漢字は読める。 2番目に覚えた日本語。 赤い線を引いてもいいだろうか？ いつかあなたが気付いてくれる日がきたら面白い。 #おはよう兎虎SS

「何かいい香りがしますか？」 「生垣にバラが咲いてるもんな〜。公園のも見頃らしいぞ！キッチンカー出てるから昼はそこでもいいかも！」 お昼ご飯が楽しみになってきた。 ずっと住んでいるのに知らなかった事がたくさんあるのに気付く。 もっと色々見てみたい。 あなたと一緒に。 #おはよう兎虎SS

「腹減った・・・」 「そろそろ起きてカフェにでも行きますか？」 「腰痛ぇからヤダ」 「冷凍チャーハンありましたっけ？」 「あるけど・・・皿に盛れよ？圧縮おにぎりとかにしなくていいからな？」 「何ですかそれ？普通に握ってきますよ？」 「いや・・・だからそれが・・・」 #おはよう兎虎SS

「早く帰ろうぜ！」 ちょっと待ってと伝えてコンテナに入れたスーツの緑色に輝く発光パーツにキスをした。 今日も守ってくれて有難う。 明日もお願いします。 「早くって！」 「すみません！」 お互いに気付かないフリだけど、朝はあなたがキスのお守りをくれているのを知っている。 #おはよう兎虎SS

「月が綺麗に見えてる！」 言われて空を見上げたら昼空に大きな満月が浮かんでいた。 時々あるけれど気にもしていなかった。 「本当だ。これはこれで綺麗ですね」 あなたの真意は分からない。 だから追い越すついでにキスをしてみた。 さて、結果はどうなるだろう？ #おはよう兎虎SS

真っ白なドレスとベールが風に舞う。 街頭広告を見て目を細めたあなたが振り向いた。 「こんなん似合う嫁さん貰えよ？」 どうもこういう時は意見が食い違いうらしい。 「お嫁さんをもらうつもりはありませんが、ドレスで式がお望みでしたらオーダーしますけど？」 「ん？」 #おはよう兎虎SS

腕枕してくれる手が首の下に入れるにはキツくなってきた。 筋肉が育ちやすい体はいいなと嫉妬する。 少しずり下がって布団の中に隠れる。 胸の中で動く心臓の音に包まれていると、色んなことがまぁいいかと思えてくる。 もう寝たかな？ 何だか無性にキスしたいんだけど・・・。 #おはよう兎虎SS

「あっちだって！」 楽しそうに笑いながら駆けて行く後ろ姿を追いかける。 軽く走っている風なのに結構早くて、これはちゃんと走らないと追いつけないと思った。 「ほら！あっち！」 差し出された手を握る。 不思議と軽くなる体。 一緒に食べたアイスは美味しかった。 #おはよう兎虎SS

ヨシ！終わった！と携帯を見たら遅くなるとのメールに返信が来ていない。 ネットで名前を探せば案の定だった。 人助けの場所はベイエリア。 ずぶ濡れだけど怪我はなさそうだ。 今からなら僕の方が早く帰れるかも知れない。 デリを買って、暖かいお風呂を入れておいてあげよう。 #おはよう兎虎SS

「おまえも食えよ！」 差し出されたのは緑色の丸い飴だった。 確か受付にある子供用のお菓子だ。 ロゴも入っていない市販品。 きっともらって来たんだろう。 無邪気に笑う横で包みを開ける。 ツルンと入って舌の上を転がる甘い粒。 あなたはきっと僕が何を考えてるかなんて知らない。 #おはよう兎虎SS

「なぁなぁ！オジサンになったのどんな気分⁈」 「僕はオジサンじゃ・・・あなたみたいになるならいいのかもしれないですね。毎日楽しそうだ」 「な・・・一緒に居たら似てくるらしいぞ」 「じゃぁきっと・・・え？ちょっと待って！それってもしかしてプロポーズ⁈逃げるな！」 #おはよう兎虎SS

「美味いよ？」 あなたはそう言うけれどブラックコーヒーは苦いと思う。 ビールもそうだし、焼酎やウィスキーのロックは喉に痛い。 「甘い方が美味しいでしょう？」 「ん〜そうなんだけどさ〜」 近づいてくる唇を塞ぐ。 きっと今、あなたは甘いなって思ってる。 #おはよう兎虎SS

「何時間洗面所を占拠するつもりだよ！ヒゲ剃れねぇじゃんか！」 「鏡半分で我慢してくださいよ！」 「前と横見ながらするんだよ！」 「僕も・・・僕が剃ればいいのでは？」 「いや待て、鏡は見なくていいけどその理論だと俺がおまえの髪をセットするんだぞ？」 「・・・ダメですね」 #おはよう兎虎SS

「好きだぞ！」 こんな素直に言ってくれるなんて夢みたいだと思っていたら目覚めた。 ブラインドから差し込む朝日に照らされてあなたはまだ寝ている。 「ですよね・・・」 そっと頬にキスをする。 「・・・に〜だいすき」 何故か笑って漏れる寝言。 僕はもう寝れそうになんかない。 #おはよう兎虎SS

メンテナンスを頼んだセントラルヒーティングから懐かしい物が出てきた。 透明な石で出来たサイコロ。 娘と妻がすごろくをして遊んでいた。 「それどんなゲームですか？」 聞かれて、話して。 きっとおまえとじゃなかったら、こんなに鮮やかに思い出す事もなかった記憶が蘇る。 #おはよう兎虎SS

髪をかき分けて落ちてくるキスが冷たくて気持ちいい。 「風邪うつるぞ？」 「あなたのだったら喜んで」 毛布を引き上げて肩までくるんでくれた。 もし本当になったら俺もやってあげよう。 りんごをすりおろしたのとおかゆも。 人がいると落ち着くんだって・・・思い出した。 #おはよう兎虎SS

「これクルクルしたら音が鳴るんだぞ！」 「あぁこれは・・・α波でしたっけ？」 「夢がねぇなぁ〜」 「じゃぁ緑色の小さな葉っぱがいっぱい付いてるのであなたの愛が奏でる音ですね！」 「わ！待て！やっぱダメ！いきなりハンサムは禁止！」 #おはよう兎虎SS

分をわきまえずに踏み入ってくるような輩でもスポンサーとあれば無下にもできない。 けれど微笑むのは問題ないはずだ。 ちゃんと笑って理由を告げたうえで退席する。 もちろん相棒をしっかりと腕に抱いて。 あの顔は覚えた。 二度と出入りできないように手を打っておかないと。 #おはよう兎虎SS

「全く君は今何時だと思ってるんだい！」 ドアも空いてないのに出社したのが分かる。 一緒の撮影はすぐ後。 2人分の資料は持った。 昨日の報告書はサインして出すだけに仕上げてある。 お礼はスタジオ横にあるダイナーでランチを奢ってもらおう。 もう少し欲を出してもいいだろうか？ #おはよう兎虎SS

「寝たか？何も着ないなら上掛けくらいかけろよな〜。風邪ひいたらファンの子達が泣いちゃうぞ・・・って俺はひとりじめできるからいいんだけどな・・・うわ！ハズい！寝よ寝よ！」 どうしよう・・・寝たふりで驚かせようと思っただけなんですけどこれは嬉し過ぎるんですが・・・。 #おはよう兎虎SS

「はい、今朝出したシーツです。そうなんですよ。恥ずかしいから外注するなって怒られまして・・・洗剤ですか？使った個数だけ補充で。普段着は今まで通りお願いしますので定期配送までは要らないかと思います」 「おい、恥ずかしいの意味から説明すっから正座しろ！」 #おはよう兎虎SS

「3！2！1！」 周囲の歓声を受けながら花火が打ち上がった。 チラリと見上げて警備に戻る。 「来年もまた一緒に見れるといいな！」 専用通信で聞こえる楽しそうな声。 「僕たち仕事ですよ？」 「い〜じゃん！役得？」 たしなめるけれど気持ちは同じだ。 空を見上げて来年もと願った。 #おはよう兎虎SS

「またチャーハンがいいのか？」 ニコニコ笑ってハイと返事。 まぁいいかと鍋を振る。 皿を出したりビールの用意をしながらもこっちをチラチラと見ているのが分かる。 毎回変わり映えしなくて悪いなぁ〜と思いながら皿に盛る。 でもいっか。 俺もコイツが食ってる時の顔好きだし！ #おはよう兎虎SS

「いい焼酎をもらったので家でどうですか？」 「お肉を頂いたんで飲みませんか？」 いい加減ネタも尽きたなと焦る。 一緒にいる理由が欲しいのに見つからない。 「ひとりで飯食うの寂しいから家に来いよ！」 驚いた。 そうか、一緒にいたいという理由で誘っていいんだ！ #おはよう兎虎SS

「やっぱ赤と緑はセットでないとな！」 「ブロッコリーの方が多いですね」 「やべ！取り合でケンカになるからトマト増やすか！」 「あなた自分とケンカするんですか？」 「・・・するだろ？」 「そうなんですね」 「うっせ〜なぁ〜。するんだよ！」 #おはよう兎虎SS