お日さまを背に受けて 雪どけのぬかるみを、走りに走りました。 幸福でいっぱいになって、 なんにも考えずに、走ったのです。 #ムーミン谷の冬 #ムーミントロール

そのとき急にとても嬉しくなって なんだか、ひとりになりたくなりました。 そこで彼は、ぶらっと たきぎ小屋のほうへ行きました。 誰にも見えないところまでくると、 彼は駆け出しました。 #ムーミン谷の冬 #ムーミントロール

おしゃまさんの手まわしオルガンは、 ずっと鳴り続け、お日さまの光は ムーミン谷に降り注いでいました。 大自然が、今までみんなに あんなに不親切だったのを詫びるかのように。 #ムーミン谷の冬

おしゃまさんが、屋根からしたたる 雪どけの水の雫をあびながら、 空色の帽子を裏返しにかぶって オルガンのハンドルを回して言いました。 空も、帽子とそっくりの青さで お日さまが、オルガンの銀の金具に きらきらと輝きました。 #ムーミン谷の冬

ママはまぶしそうに お日さまの方を見ながら、言いました。 「世の中って、ほんとにおもしろいものね。 銀のお盆の使い方は一つきりだと 一生みんなが思ってきたんだわ。 それなのに、全然別の ずっと良い使い方があったのね」 #ムーミン谷の冬

「雪はぼくの鼻まで届いたよ。 あのね、雪ってものは 空から小さな小さな冷たい お星さまみたいにして、降ってくるんだよ そして上の方の黒い空には、 青と緑の羽みたいなカーテンが かかっているの」 「まあ、きれい」 と、ママは言いました。 #ムーミン谷の冬 #ムーミントロール

そこでムーミンは台所へ出ていって、 ママに言ったのです。 「おいでよ、雪を見せてあげるから」 ママはすぐさまお皿を洗うのをやめて 息子と一緒に、お日さまの下へ 飛び出しました。 #ムーミン谷の冬

ムーミントロールは もう少し病気になっていて、 甘えたいような気もしました。 でもママのところへ行くほうが やっぱりいいと、すぐ思い返しました。 #ムーミン谷の冬

「おまえ、外へ出て 風邪をひいてきたのね」 ママはあたたかいジュースを作りに 台所へ出ていきました。 「そこ、汚れているよ」 とムーミンは哀れな声を出しました。 「いいのよ、いいのよ。 じきに綺麗になりますよ」 #ムーミン谷の冬 #ムーミンママ

氷の屋根はすっかり崩れ、 波がワルツを踊っていました。 #ムーミン谷の冬

ある風の強い日のことです。 夕暮れ前に、力強く勢いのよい音が、 海のほうから聞こえてきました。 「あらまあ！」 おしゃまさんが手に持っていた コーヒー茶わんを置いて叫びました。 「向こうで、春の大砲が鳴ったわ」 #ムーミン谷の冬

「どんなことでも、 自分で見つけ出さなきゃいけないものよ。 そうして自分ひとりで、 それを乗り越えるんだわ」 #ムーミン谷の冬 #おしゃまさん

「さあ、水あび小屋が また水あび小屋になるのよ。 そうして、暑くなって どこもかしこも緑になったら あんたは桟橋の お日さまであたたまった板の上に 腹ばいになって浜べに打ち寄せる 波の音を聞きながら…」 #ムーミン谷の冬 #おしゃまさん