- すべて
- 画像・動画
並べ替え:新着順
しずかに夜のふけていく中で、 スクルッタおじさんは いったい自分は、 なにをしたいと思っているんだろうと じっと考えていました。 そうだ、遠いむかしに 行ったことのあった、 あの谷へいってみたいんだ。 #ムーミン谷の十一月 #スクルッタおじさん
そのひとは、気味の悪いくらいに 年寄りでした。 そして、とても忘れんぼうでした。 ある秋の 朝まだ暗いころのことです。 目が覚めてみると、その人は 自分の名前を忘れていました。 #ムーミン谷の十一月 #スクルッタおじさん
葉のおちた木々が、 十一月の霧の中に ぼうっとかすんでいました。 でも、その木々は一瞬 ちらっと緑につつまれ 梢をもれる日の光に 青葉がきらりと光りました。 ホムサはどこかで、気持ちのいい あまいライラックの香りが におうような気がしました。 #ムーミン谷の十一月
道はずいぶん遠いうえに、 ホムサの足は短い足。 池や水たまりにぶつかるたびに まわり道をしました。 それでも 道に迷ったりはしませんでした。 ホムサは しあわせでいっぱいでした。 自分がどうすればいいのか、 わかったのですからね。 #ムーミン谷の十一月 #ホムサ
かえって気分が うきうきしてきました。 それにさ、雨にびしょぬれに なってみたことだってなかったんだ。 ヘムレンさんは、両手を 翼みたいにバタバタふってみました。 #ムーミン谷の十一月 #ヘムレンさん
ムーミン家の南の客間です。 そして、あそこで朝 目を覚ましたときに、 愉しくてたまらなかったことでした。 窓はあいていました。 そよ風がふくと 白いカーテンが ひらひら風になびきました。 なにをするにも、 急ぐ必要がありませんでした。 #ムーミン谷の十一月
ヘムレンさんは、朝っぱらから 憂鬱になってしまったのを ひと思いに 吹き飛ばしてしまえるような 楽しいことは、何かないかしらと 知恵を絞ってみました。 一生懸命考え抜いているうちに ちらっちらっと 遠い夏の日のなつかしい思い出が よみがえってきました。 #ムーミン谷の十一月
ふいに、ヘムレンさんには なんだか自分は朝から晩まで あれこれ、物の置き場所を変えたり 人に、それはどこに置くほうがいい なんて言ってばかりいるように 思えてきました。 すると、ふと 自分がなんにもしなくなったら どうなるんだろうという気がしました。 #ムーミン谷の十一月
ヘムレンさんは ねむい目をこすりこすり やっと目がさめました。 目が覚めきってみると、 自分はやっぱり、いつもの自分です。 ちっとも変わっていません。 ああいやだなあ。 もうぼくは自分が嫌になった。 なにか、ぼくの知らない 違ったものになりたいなあ。 #ムーミン谷の十一月
スナフキンは テントの中へはいこみました。 寝袋にもぐりこみました。 頭の上まで寝袋をひっぱりあげて、 すっぽりとくるまりました。 かすかな雨の音も、涼しい流れの音も まだきこえています。 しんみりした しっとり気持ちの落ちつく やさしいしらべでした。 #ムーミン谷の十一月
さあ、いままでしまっておいた、 その五つの音色をつかって 雨の曲を作るときが、 いよいよ近づいてきたんだ。 スナフキンは耳をすまして、 あの五つの音色が またきこえてくるのを、 じっと待ちました。 #ムーミン谷の十一月
それは、なにかの曲の 素晴らしい出だしになるに 決まっている調べでした。 そのしらべは、まるで 今まで縛られていた縄がとけて 自由になったとたんに、 スナフキンの頭の中に 飛び込んできたみたいに ひとりでに、すらすらと 浮かんできました。 #ムーミン谷の十一月 #スナフキン
ある日の夕がた、スナフキンは リュックの底にしまいこんであった ハーモニカをとりだしました。 この八月、ムーミン谷のどこかで 彼の頭に、五つの音色が ひらめいたのです。 #ムーミン谷の十一月
地面の下にすがたを隠していた、 いろいろな苔も地肌を 染めはじめていました。 それが、だんだん広がっていって しまいには、森じゅうに やわらかな大きなじゅうたんを 敷きつめたようになるのです。 #ムーミン谷の十一月