#今日の平家物語 その時大納言、淚をはらはらと流いて、「さりとも、我世にありし時は、隨ひ付きたりし者ども、一二千人もありつらんに、今はよそにてだに、この有樣を見送る者のなかりける悲しさよ」とて泣かれければ、たけき武士どもも、皆鎧の袖をぞ濡らしける。

#今日の平家物語 周の幽王、褒姒と云へる最愛の后を持ち給へり。(略)すべて笑ふことし給はず。(略)或る時天下に兵革起つて、所々に烽火をあげたりければ、后これを御覧じて、あなおびたゞし、火もあれ程まで多かりけりなとて、その時始めて笑ひ給へり。

#今日の平家物語 されども當家重代唐皮といふ鎧、小烏といふ太刀をば、忍びつゝ御車に入れられけるとぞ承る。用意のほどこそ恐ろしけれ。

#今日の平家物語 聖德太子十七箇條の御憲法に、人皆心あり、心各執あり、彼を是し我を非し、我を是し彼を非す、是非の理誰かよく定むべき、相共に賢愚なり、環の如くにして端なし、こゝを以てたとひ人怒ると云ふとも、却つて我が咎を懼れよとこそ見えて候へ。

#今日の平家物語 太政の入道は(略)赤地の錦の直垂に、黒絲威の腹卷の白金物打つたる胸板せめ、先年安藝守たりし時、神拜の次に、靈夢を蒙つて、嚴島の大明神より現に賜はられたりける、銀の蛭卷したる小長刀、常の枕を放たず立てられたりしを脇に挾み、中門の廊にぞ出られたる。