#拾い読み　#見田宗介 ○いうまでもなくわれわれは、世界に〈適応〉し〈同調〉していくのみでなく、世界を〈変革〉せねばならない。変革の方向を指示するものは、人びとの価値意識であろう。しかもそのさい、現時点における民衆の要求や道徳を固定化し絶対化して追随してはならない、その名に値する

#拾い読み ○人類の未来の世界は、諸個人の欲求そのものが、相乗的に他をゆたかにし合う関係を原理とするだろう、少なくともわれわれの未来の世界を、そのような欲求の相乗性として構想することが可能である ○われわれの行動を方向づけるべき、このようなモデルを明確に構想したのちに、現実の→

#拾い読み #生きがい ○自己自身をのりこえることのない人生、自己自身の利益や幸福を唯一の目的とする人の生きがいは、あたかも蛇が自分のしっぽを食うようなかたちで一つの閉じた輪となって、何ものにも支えられることなしに、意味の虚空を漂うことになる。彼がふと、その生きている意味を明晰に→

#拾い読み　#生きがい ○未来は現在の意味であり、他者は私の意味である。そして、いまここに生きる自分が、このような未来と他者に向かって自己をなげかけることをとおして、その未来と他者とから意味を獲得することこそが、〈生きがい〉の固有の実体にほかならない。

#拾い読み　#生きがい ○〈生きがい〉とは神の観念の不在をうめるものである。なぜならば神の人間的な意味とは、その人生を根拠づけるものにほかならないのであるから。 ○したがってまた何かのかたちで、人生を意味づけるものへの信仰があるかぎり、それが必ずしも神でなくとも、〈生きがい〉は→

#拾い読み　#生きがい ○神を信ずる文化のなかでは、人びとは〈生きがい〉について、あれこれと今さらのように問題としない。〈生きがい〉を問う必要はないわけである。 ○自己の存在を意味づけるものへの信仰を失ったとき、はじめて〈生きがい〉の問題が深刻に人間をおそう。

#拾い読み　#生きがい ○〈生きがい〉は精神のパンといわれる。なるほど〈生きがい〉などというものがなくとも、人間は一個の生物体として、たとえば丸々と太った一つの肉体として、りっぱに生存することができる。けれども、そこに、一つの人格としての生、つまり人生は存在しない。

#拾い読み　#生きがい ○ひとりの人間の生き方を理解するときのかなめは、彼の人生が出会うさまざまな条件や事件をつらぬいて、その生き方を全体としてみちびき方向づけている規制的原理としての〈生きがい〉にほかならないだろう。 ○逆にこのような、人生全体に意味を与えて賦活する力としての→

#拾い読み ○ブルジョアというのは、他人のつくりだしたものを自分のものにして、自分の力でつくりだしたかのように威張りかえっているものでしょう？　だから、他人の学問上の成果をもらって、……自分の業績ででもあるかのように威張っているのは、「ブルジョア学者」ではないですか？

#拾い読み ○疑わしいとわかっているものを疑うのはほんとうの懐疑ではない。疑わしくないものを疑ってかからなければならない。これが実践ときりはなされて、ただ懐疑するだけなら懐疑論者になってしまいますが、それが現実においてためされるならばほんとうの科学者の態度です。

#拾い読み ○認識が無限に複雑なニュアンスをもっていること、しかもそれが弁証法的であること、認識の諸特徴・諸方面・諸限界のどの一つにもそこから観念論へおちこむ落し穴がまちぶせしていることを、現実から広く深く学ぶことが必要なのです。

#拾い読み ○いくら唯物論者のつもりでいても、理論を実践によってためさなければ、真理は自分のものにならぬ。大衆は哲学の本こそ読まないが、現実のなかで実践をかさねることによって、哲学者のつかんでいない真理を自分のものにしている。

#拾い読み ○いまの哲学者は、誤謬が認識にとって本質的なものだということを無視している。 ○誤謬を、主体的活動そのものを検討して論ずるのでなく、外的条件に押しつけるからこそ、観念論者に「主体性を無視している」と、痛いところをつかれるのである。

#拾い読み 「ウソをいってはなりません。人間はいつも正直にいわなければなりません」しかし、ドロボーがあなたをつかまえて、金のありかはどこだ、ときいた場合はどうでしょう？　天皇は神さまでないと正直にいったら牢獄に入れられるような世の中で、これが通用するでしょうか？

#拾い読み ○戦争中にも自由はありました。わたしたちが正しいことをいったり行なったりする自由はありませんでしたが、ウエ死とか自殺とかほかの自由はいくらでもありました。戦争犯罪人たちは、たくさんの自由を思う存分たのしんでいました。あらゆる悪事をする自由をもっていました。

#拾い読み ○実は、民主主義は「多数を尊重」するのではなく「多数の利益を尊重」することです。 ○多数ならなんでも正しいというのはニセ民主主義で、あの恐ろしいファッショの考え方と同一です。

#拾い読み ○戦争がどういう性質のものかをしらべることなしに、戦争の当事者を平和の敵として同一視してはなりません ○「あらゆる暴力を否定しなければならない」という学者や宗教家のお説教は、それだけ聞くともっともらしく道徳的に聞こえますが、この説教は一体誰にとって利益なのでしょう

#拾い読み ○戦争にも侵略者のやる戦争と解放者のやる戦争とがあります。問題は「戦争をする」ことではなく「どんな」戦争をするかにあるのです。もちろん、戦争をしないでこの大きな悲惨が姿を消せば、これにまさる喜びはありませんが、正義のためにやむなく戦わねばならぬことも起こるのです。

#拾い読み ○強盗は「平和」を望んで平和宣言を出すものです。―「おとなしく金を出せ」―これが彼の望んでいる「平和」状態です。わたしたちのいう平和は、強盗のいないという平和であって、強盗の望む平和と全く反対の立場からの平和です。戦争犯罪人の口ぐるまに乗って、これを混同してはなりません

#拾い読み ○真理は、すべてきまった条件のなかで正しいのです。その適用される限界があります。いくら正しい理論でも、その条件を無視し限界を越えて度はずれにひろげるならば、それはまちがいになります。科学は非科学になり、科学的な哲学は神がかり哲学になるのです。…諸君も、友だちの小さな→

#拾い読み ○自分では働くものの味方だと思っていても、その理論が神がかりの性質をもっているなら、実は知らぬまに資本家側に加担して、働く人たちの敵にまわっているのです。 ○科学が進歩して社会のしくみがあきらかになると、自分たちの地位の危うくなるような人たちが、宗教を歓迎したりする

#拾い読み ○観念論だからといって、頭から否定するのはまちがいです。ヘーゲル哲学を研究したレーニンも「かしこい観念論はおろかな唯物論よりもかしこい唯物論に近い」と含蓄のふかい言葉をおぼえがきしています。