今にして国家の危機に殉ぜざれば 我が愛する平和はくることなし 我はこのうへもなく平和を愛するなり 平和を愛するが故に 戦ひの切実を知るや 戦争を憎むが故に 戦争に参加せんとする 我等若き者の純真なる気持を 知る人の多きを祈る ―海軍中尉 古川正崇(振天隊 S20.5.29)

芳司は大命に依り、特別攻撃隊として決戦に 直接参加の光栄を受く　男子　ましてや 空中勤務者としての本懐此の上もなし 我の死に依り 米英の作戦上若干なりとも 影響する事が出来得れば幸甚なり 最早此の世に何の未練はなし ―陸軍伍長 高宮芳司(殉義隊 S19.12.29)

悠策、手がみありがとう。とても嬉しかった。元気らしいね。しっかり勉強しろ。お友だちとはなかよくしろ。友だちがわるかったらやっつけろ。そして、りっぱな人になるんだよ。お前がりっぱになれば、それだけ日本が強くなる。 ―海軍少尉 塚本太郎(回天金剛隊 S20.1.21 弟へ)

私が散りしとの報到りましたら、あの高い、そして静かな空に溶けて行ったものとだと考えて下さい。そして真っ先に仰いで空を見て下さい。そうして戴ければ、私はいつまでもいつまでも母上様の胸の中に生き、よみがえって来ることでしょう。 ―海軍少尉 田所昇(第十二航戦水偵隊 S20.6.25)

こん夜は可愛き吾が子の勲の戦況をラヂオを通して聞いて下さい。屹度偉大なる戦果をあげてせめてもの孝養と致します。 出撃前の精しき事はこの手紙を持来する兵曹長に御聴き下さい。 さやうなら ―海軍中尉 四方巌夫(第二魁隊 S20.5.11)

家からは度々手紙が来るが光男もひまがあったら時々手紙を出しなさい。きっと心配して居るぞ。栗拾いに行ったそうだが大きな栗が取れたそうだね。満州には栗の木などは見られないよ。やはり日本は良い國だと思う。 ―陸軍軍曹 細金政吉(第一〇七振武隊 S20.4.16 疎開中の弟へ)

人と生まれ、誰か家郷を想わず、私事、私慾にとらわれぬ者がありましょう。しかし、それら諸々の私欲煩悩を超えて厳然とそびゆるもの、悠久の大義に生きることこそ、最も大いなる私を顕現することなのです。 ―海軍中尉 都所静世(回天金剛隊 S20.1.12)

死と云うものを私は脱却出来ないのである。死にたくないのだ。今一度、父母の前で酒を飲みたいのだ。そして思いきって優しい言葉の一つをかけてみたいのだ。(略)日曜のよるは誰でもが一応感傷を抱くらしい。私もその一人であろう。 ―海軍中尉 林憲正(第二次流星隊 S20.8.9)

沖縄の沖合には憎むべき醜敵がうようよとしてゐます。悠久二千六百年にあまる輝かしき歴史をもつ我が帝国をうかがわんとしてゐます。三千年来、我等の祖先が守り続けた皇国は子孫たる私達の手で守らねばなりません。 ―海軍二飛曹 佐山一(第一草薙隊 S20.4.6)

蟬の声を聞くと、昆虫採集に夢中となり、勉強も夕食も忘れて遊んだ時代が思い出され、腕白、我儘な自分が、現在の如き身となり得たということを考えると、父母の有難みがしみじみと感じられた。 ―海軍少尉 伊東修(回天金剛隊 S20.1.12)

この世の総べてのきずなを、たち切った君ではなかったか。 唯一筋国を思うの熱情の前に何の未練があろう。 愛する父よ、母よ姉弟よ、そしてああ！何も思うな、考えるな、ただ征け！ 征ってこの国が、この民族が救われるなら！ ―海軍中尉 小城亜細亜(第四御楯隊 S20.8.13)

私は今まで生き長らえて、遂に目ざす美酒を得ることが出来ました。天が私に与えて下されたこの大いなる仕事、私は本当に幸福者であります。私は死に物狂いで必ず敵空母か戦艦に体当たりし、南溟の海に皇国の永久の発展を祈って征きます。 ―海軍少尉 本井文哉(回天金剛隊 S20.1.12)

勝たないまでも負けない。それが日本を亡国から救う道である。 そのためにはどうしても特攻が必要なのだ。 国民全部が特攻精神を発揮すれば、たとえ負けたとしても、日本は亡びない。そういうことなのだ。 ―海軍中将 大西瀧治郎(第一連合基地航空隊司令官 S20.8.16自決)

きりりっと飛行服に身を固め、次々と空の決戦場に爆音高鳴る明日の日ぞ面白し。ボーイングこれが悠々と我物顔に神州の空を侵す時、じっとがまんして涙を止めて舞ひ上らざりしも、皆明日のためなり。必ずや、必中必沈莞爾として征きます。 ―陸軍伍長 長谷川三郎(第六十一振武隊 S20.4.28)

早苗ちゃん かぜをひかないか、元気で、毎日、日参に又学校に行って居りますか。寒いから、きをつけなければならないよ。早苗ちゃんが病気になると兄さん、うんと心配しちゃうからね、病気になんか成んぢゃないよ。 ―海軍上飛曹 田中哲郎(第三御楯七〇六部隊 S20.4.7 妹へ)

誰がやる 彼がやるでは はじまらぬ 我さきがけて 国をまもらん ー陸軍伍長 木谷豊二(義烈空挺隊 S20.6.15 ※戦死認定日)

お父様、お母様、皆々様さようなら 榮は喜んで征きます 生涯の御恩忘れません 永らく御達者で 若桜 南の空に はばたかん うちてしやまむ 沖つしら浪 ―陸軍伍長 小川榮(第五十九振武隊 S20.5.28)