ぼろぼろにひび割れし顔をさらし歌ふ森進一を存外好む/小池光 観音のおもざしもてる壇蜜がこちら向きたりテレビの中に/同 倍返しする敵もをらずわがめぐりあをきすすきの穂が揺れはじむ/同 #響いた短歌

こすもすの畑もとうに枯れはててくる白雪を待てるしづけさ/小池光 掃除機に吸ひこまれたるくつしたは常闇の国へ行つてしまへり/同 きみの靴捨てむとしたる手ふと止む最後に履きしはいつとおもひて/同 #響いた短歌

タラバ蟹の一本の脚を抜きて食ふ口腔ふかくふかく笑ひて/小池光 室内をかへりみすれば常滑の急須がひとつおもひでのごと/同 連翹の花の蜜すふひよどりにいくらのいのちが残されてゐむ/同 歌集『思川の岸辺』より #響いた短歌 #小池光 さん pic.x.com/tXHJ1SrGw2

青が澄んで、ちいさな雲までくっきりと感じられる空になってきました。ふと口ずさんでしまう、大好きな雲の歌を二首。 秋の雲「ふわ」と数えることにする　一ふわ二ふわ三ふわの雲/吉川宏志 おほぞらを雲のまにまにスフィンクスゆけり前方後円墳ゆけり/小島ゆかり #響いた短歌

生薬のまじれるやうな雨に濡れ仔犬とわれと踏切に待つ/栗木京子 新緑のさやげば恋へり水中に身をくねらせし魚の記憶を/同 泡状のソープふたたび泡立てて口語短歌の未来をおもふ/同 歌集『ランプの精』より #響いた短歌　#栗木京子 さん pic.x.com/ru3ikbenfd