小説を出した時には日本各地でサイン会を行っている。人前に出るのは得意ではない。だから小説家になったのだ。それでもサイン会を行うのは、あの人と再会することを願っているから。学生の時にあの人が付けてくれたペンネームで活動しているのもそのためだ。#twnovel #言葉の添え木 ずっと探してた

生徒会長だけのパソコンが学校にはある。それでB級ホラーを密かに見るのが私の趣味。お堅い性格だと思われている私の唯一の気晴らしだ。ただそれが書記にバレた。ブラウザを閉じるのを忘れて作業を頼んだからだ。弱みを握られた私は、週末彼とB級ホラーを観に行く。#twnovel #言葉の添え木 ブラウザ

君と同じクラスになりたくて何度も一学期の最初の日をやり直した。やっと同じクラスになれたが、違和感がある。「春休みの間に背が伸びたね。いつの間にか抜かされちゃった」。タイムリープしている間に、君と目線が同じになるという特別な時間を通り過ぎてしまった。#twnovel #言葉の添え木 時の旅人

夫の親の世話でこの街に引越してきた。｢初めての街は不慣れだと思うけど｣と夫は言うが、実は初めてではない。昔失恋した時に、恋人が生まれ育った街を見てみたいと思って来たことがある。まさかまた、その時の恋人と共にこの街に来ることになるとは思わなかった。 #twnovel #言葉の添え木 街

入院中の母の窓辺にたんぽぽを飾り付けた。｢あなたはずっとたんぽぽが好きね｣と母は呆れて言うが、それは母のせいだ。子供の頃、たんぽぽが好きな母にプレゼントしたところとても喜んでくれて、それが嬉しくてたんぽぽを探しているうちに、私も好きになったのだ。 #twnovel #言葉の添え木 たんぽぽ

カレンダーを五月にめくろうと思い、でも何となく逆にめくった。三月、二月、一月。正月にはコタツの中で何の心配もなく楽しく話してた。まさかあなたがいなくなるなんて思わずに。カレンダーをめくるように時間も簡単に巻き戻せたら、どんなにいいだろう。#twnovel #言葉の添え木 カレンダー

合鍵を使って家に入る。彼が家にいることは知っているけど、合鍵を使うのってやっぱり恋人っぽい。でもそれで正解だった。彼はソファーに座って寝ていた。文庫本を持ったまま。私を待っている間に寝てしまったのだ。シーツを掛けるついでに、私も一緒にくるまった。 #twnovel #言葉の添え木 お昼寝

彼女が駅前で待っていた。傘と、紙袋に入れたコートを抱きしめて。彼女は濡れてしまっているのに、コートは後生大事に抱えている。僕は震える彼女を抱きしめた。｢濡れちゃうよ｣と言われたけど関係ない。二人で一緒に入る傘の帰り道。世界はとても華やいでいた。#twnovel #言葉の添え木 雨のワルツ

僕が死んだという噂を聞いた。休み時間はその話題で持ちきりだ。 「陸上競技大会のリレーの選手を誰にするんだよ？」 「誰もいないだろ」 そんな話ばかり。僕が死んだ事を悲しんでいる奴はない。ふと見ると教室の隅っこで留美ちゃんが泣いていた。 僕は時間を超えて自殺する前の体に戻った。#twremix

友人とのカラオケでは絶対に歌わない恋愛ソングを入れた。この曲だけは歌えるように練習していたんだ。僕は歌いながら横目で君を見る。君は他の男子と楽しそうに喋っている。僕も僕の歌にも興味がないんだ。何も起こらず歌が終わった。誰かが小さく拍手をしていた。#twnovel #言葉の添え木 アイノウタ

僕には魔王を倒す力がある。道具も揃ってるし勇気もある。仲間も冒険者ギルドに行けば集まるだろう。でも姫が攫われていない。姫を救い、その姫と結婚出来るオプションが付かないと、結婚氷河期の昨今はなかなか難しい。 #twnovel #言葉の添え木 勇気

先輩が会社を辞めたという噂を聞いた。陸上部員として就職していた。学生時代は県内屈指の実力だったけど、テレビで先輩の活躍を見ることはなかった。私は先輩の走る姿に憧れていたけど、運動音痴の私は当時は容易には近づけなかった。今度会いに行ってみようかな。 #twnovel #言葉の添え木 風の便り