嫌いなのに、心が躍る。あいつはいつも乱暴に現れては、手を引いて外に連れ出し、汗をかきたくない僕の心をかき乱す。まるで台風か夕立だ。今日も足音がばたばた聞こえてくるのをやり過ごしたけれど、きっとあっという間に追いつくのだろう。そして気づけば居なくなって、僕の隣に木枯らしを吹かすのだ

このツールの制限いっぱいに、SSを書いてみよう。そう思い立ち、こっそりしたためたのは随分前の話。何を思ったか、今度はもっと広い海へ放ってみようと思い立ち、そっとしたためたのが今の話。汐のように満ち引きする心に映る、夢やうつつの景色を残せたら、そしてそれがあなたにも映れば良いなと思う

名付け……自分が一番苦手な作業だ。人の名前に、タイトルに、創作したモノに。名は体を表すと言うだけあって緊張するし、何せセンスが無い。ペンネームだって、考えるのに三日はかかった。やっと名前が決まり、さあアカウントを作るぞと画面を開いて絶望する。ああ、この作業が苦手なのも忘れていた。

「春の雨と書いて、はるさめ。だから今日は春雨スープだ！いや麻婆かなぁ、どっちがいい？！」夕飯の買い出しに上気する、ふくふくの頬を見つめる。俺も料理は作れるけれど、パートナーは作るのも、食べるのも全力だ。何より、美味い。今日も胃袋を掴まれるのを楽しみに、相合傘で、一緒の帰路についた

ずいぶんみんな気が早いな、ゴールデンウィークだなんて。ラジオを聴けば天気や渋滞予測の話ばかりだし、人に会えば連休どこかへ出かけるのかと聞れるし。ついこの前三月から変えたばかりじゃないかと笑ってカレンダーを見て、日付にマルをしていくうちに笑いが乾いていく。気が遅いのは、僕の方だった

昼寝をしすぎた。耳に入ってくるのは、季節外れのクーラーと、ゲーム機のファンと、窓の外の音ぐらいだ。いつも騒がしいモニターは、操作してないじゃん！！とへそを曲げ、自ら電源を落としている。そのままぼうっと瞑想でも、と再びまぶたを閉じた私の耳に次に届いたのは、情けない腹の虫の音だった。

かちゃかちゃ、ざーざー。僕がご飯を作った日は、必ず彼が食器洗いをしてくれる。最高の満腹感と、台所から聞こえる手際の良いリズムの子守唄に、瞼が重くなる。二人で選んだお気に入りのカーペットの上で、今日はどんな夢を見るだろう。そしていつ、優しい声で、お風呂入りなよって起こされるだろう。

はっと目が覚め、視線を移した先。カーテンが濃い青に染まっているのを見て、まだ大丈夫だと安心する。もぞりと身を起こして窓を開ければ、静かな景色と、不安を洗い流す新しい空気と、誰かが起きる気配とが部屋へ流れ込んでくる。苦手な朝が来る憂いを感じながら、今はただ、大好きな瞬間に身を委ねる