#古代ギリシャ語の文字と発音 コイネーの #二重母音 まとめ ①短母音+イオタ ι ᾰι [ai]アイ υι [yi]ュイ ει [ei]エイ οι [oi]オイ ②長母音+イオタ ι ᾳ [aː]アー ῃ [ɛː]エー ῳ [ɔː]オー ③母音+ユプシロン υ αυ [au]アウ ευ [eu]エウ ηυ [ɛːu]エーウ ου [uː]ウー

#古代ギリシャ語の文字と発音 #コイネー の #二重母音 (3) ユプシロン υ は 単独で「ュ」と読むが， 他の母音の後ろで 「ウ」と読む場合がある. αυ アウ [au] アュではない ευ エウ [eu] エュではない ηυ エーウ [ɛːu] エーュではない ου ウー [uː] ★最重要！オュではない

#古代ギリシャ語の文字と発音 下書きのイオタはOKですね. #二重母音 の3パターンに 話を戻します. (1) 短母音+イオタ ι (2) 長母音+イオタ ι (3) 母音+ユプシロン υ ※もし αι というつづりがあったら それは(1)の短母音 ᾰι アイ のはず. (2)の長母音 ᾱι アーイ は ᾳ と表記するから.

#古代ギリシャ語の文字と発音 下書きのイオタ 長母音部分が大文字の場合， イオタを下でなく 右に独立表記. ↓ 「横書きのイオタ」 (並記のイオタ，iota adscriptum) 例 オーイデーイ [ ɔːidɛːi ]， オーデー [ ɔːdɛː ] ῳδῃ　全て小文字 Ωιδῃ　先頭のみ大文字 ΩΙΔΗΙ　全て大文字

#古代ギリシャ語の文字と発音 下書きイオタ音は #ヘレニズム 期の途中(前1世紀まで)に #コイネー の発達途上で消失. つまり ᾳ ῃ ῳ は… ・ #古典ギリシャ語(前6～前4世紀)は ι を原則発音する(アーイ/エーイ/オーイ) ・新約聖書ギリシャ語(後1世紀)は ι を発音しない(アー/エー/オー)

#古代ギリシャ語の文字と発音 "The offglide was gradually lost in pronunciation, a process that started already during the classical period and continued during the Hellenistic period" 下書きイオタの出渡り音(長母音末の変化音,offglide)は古典期～ #ヘレニズム 期に徐々に消失

#古代ギリシャ語の文字と発音 下書きのイオタ 発音しなくなったのはいつ? 前2世紀まで(#ヘレニズム 期★の途中)に 下書きイオタの i 音は失われ 長母音 ᾱ η ω になった ※復習 #古代ギリシャ語 3区分 ・前8～前6世紀 アルカイック期 ・前6～前4世紀 古典期 ・前4～後6世紀 ヘレニズム期★

#古代ギリシャ語の文字と発音 「下書きのイオタ」 発音はどうする? 現代の習慣では #コイネー の下書きのイオタは 発音しないのが普通. ᾳ ῃ ῳ と書いてあったら ᾱ η ω と同じように 単なる長母音として読む. ※便宜上カタカナでは アーイ，エーイ，オーイ のように明記する場合も.

#古代ギリシャ語の文字と発音 #二重母音(2) 長母音＋イオタの表記法 長母音の下に ι を添える表記を 「下書きのイオタ」と呼ぶ. (イオタ下付母音，イオタ副記母音，iota subscript) ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B… ᾳ ῃ ῳ このイオタの音は 前2～前1世紀までに発音されなくなった.

#古代ギリシャ語の文字と発音 #二重母音(2) 長母音＋イオタ ι のパターン この場合のイオタ ι は 通常は「下付き」で表記する. ᾱι　アーイ または アー [ aːi / aː ] ᾳ ηι　エーイ または エー [ ɛːi / ɛː ] ῃ ωι　オーイ または オー [ ɔːi / ɔː ] ῳ なぜ発音が2通りあるか？(続)

#古代ギリシャ語の文字と発音 #二重母音(1) (1) 短母音＋イオタ ι ᾰι　アイ [ ai ] υι　ュイ [ yi ] ει　エイ [ ei ] οι　オイ [ oi ] 上記は とくに注意すべき点もありません. １文字ずつの文字の読み方をつなげて 「１音節の母音」として扱うだけ.

#古代ギリシャ語の文字と発音 #コイネー ギリシャ語での 「#二重母音」( diphthong [ dífθɔŋ ] ) 母音２文字で ひとまとまり(１音節)になる組み合わせ. ３パターンある: (1) 短母音＋イオタ ι (2) 長母音＋イオタ ι (3) 母音＋ユプシロン υ 読み方が特殊で 重要性が高いのは(3).

#古代ギリシャ語の文字と発音 長短記号： α ι υ が短母音か長母音かを 記号で明示する場合もある。 ※学習・研究用の記号にすぎない #マクロン 長音記号 ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E… ᾱ　ῑ　ῡ　長母音 アー イー ュー ブレーヴェ 短音記号 ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96… ᾰ　ῐ　ῠ　短母音 ア イ ュ

#古代ギリシャ語の文字と発音 短母音 ε エ ο オ 長母音 η エー ω オー α ι υ が長母音か短母音かは 単語ごとに辞書で確認 "長短記号を書かない時 長母音アー(Α)イー(Ι)ュー(Υ)を短母音とどう区別?" clsoc.jp/QA/2014/201405… ・単語アクセントや作品の韻律から確定できる場合も.

#古代ギリシャ語の文字と発音 まぎらわしい「〇プシロン」 Ε　ε　エプシロン [ e ]　エ Υ　υ　ユプシロン [ y ]　ュ 円唇前舌狭母音 [ y ] ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86… ・中国語の拼音(ピンイン)では ü ・[ i ] の舌の形で，唇を丸めて出す音 ・[ ju ]（子音+母音）ではない。[ y ] は単独の母音。

#古代ギリシャ語の文字と発音 子音字と母音字の 組み合わせの練習： 子音 [k] を表すカッパ κ を使った例 ΚΑ　κα　カ [ ka ] ΚΙ　 κι　 キ [ ki ] ΚΥ　κυ　キュ [ ky ] ΚΕ　 κε　ケ [ ke ] ΚΟ　κο　コ [ ko ] ΚΗ　κη　 ケー [ kɛː ] ΚΩ　κω　コー [ kɔː ]

#古代ギリシャ語の文字と発音 母音字 ▶長母音 or 短母音 の両方になりうる字 Α　α　ア [ a ] Ι　 ι　イ [ i ] Υ　υ　ュ [ y ] ▶短母音 Ε　 ε　エ [ e ] Ο　ο　オ [ o ] ▶長母音 Η　η　エー [ ɛː ] Ω　ω オー [ ɔː ] ※「ウ」という音の母音文字が存在しない点に注意

#古代ギリシャ語の文字と発音 ギリシャ文字の字体 ▶(1) アンシャル体(uncial) Uncial script en.wikipedia.org/wiki/Uncial_sc… a majuscule script ([mǽdʒəskjùːl]，全て大文字で筆記する) ▶(2) 筆記体(cursive) en.wikipedia.org/wiki/Cursive#G… ▶(3) 小文字体(minuscule) en.wikipedia.org/wiki/Letter_ca… .

#古代ギリシャ語の文字と発音 #ギリシャ語 の文字表を見ると… ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE… (1) アンシャル体 (uncial)，楷書体 (2) 筆記体，走り書き体 (cursive)，行書体 (3) 小文字体 (minuscule [mínəskjùːl] ) ※(3)を(2)に含める事も 楷書体/行書体が各々 大文字/小文字のもとになった.

#古代ギリシャ語の文字と発音 現代では #古代ギリシャ語 を書く際 基本的に全て小文字で表記. 大文字を使うのは ・固有名詞の語頭 ・パラグラフや引用文の先頭の文字(扉文字) などの場合に限られる. つまり初学者にとって #ギリシャ文字 は 「小文字の読み書き」を覚えておくことが重要.

#古代ギリシャ語の文字と発音 #古代ギリシャ語 / 表記体系 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4… ・古代ギリシャには 小文字も 分かち書きも アクセント記号なども 存在しなかった。 ・東ローマ帝国時代になってから アクセント記号付きで 大文字/小文字が混在し 分かち書きされるようになった。

#古代ギリシャ語の文字と発音 #ギリシャ語 にはもともと 大文字しかなかった. 古代の碑文や写本など 全て大文字で書かれており しかも単語の間にスペースが無く #ギリシャ文字 での原典解読は大変. ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE… ・古代は大文字のみ ・9世紀以降に小文字が考案された

#古代ギリシャ語の文字と発音 #古代ギリシャ語 をPCで入力するには ブラウザから 下記のWebフォームを使うのが便利 LEXILOGOS multilingual keyboard GREEK lexilogos.com/keyboard/greek… Windowsで ギリシア語キーボードを使う手もあるが キーを覚えるのが大変。 origine-mundi.xyz/how-to-input-g… .

#このアカウントで運用しているハッシュタグ その１ ▶ギリシャ語の歴史・種類 #ギリシャ語の分類 ▶文字と発音 #古典ギリシャ語アルファベット #古代ギリシャ語の文字と発音 ▶ギリシャ語の勉強法 #古典ギリシャ語を学べるWebページ #ギリシア語の参考書

#古代ギリシャ語の文字と発音 en.wikipedia.org/wiki/Perispome… ▶perispomenon: high-low pitch contour on the last syllable 最終音節(ultima)で上がって下がる(#曲アクセント) 例 θεοῦ ▶properispomenon: on the penultimate syllable 最後から2番目の音節(penult)で曲アクセント 例 πρᾶξις

#古代ギリシャ語の文字と発音 oxytone en.wikipedia.org/wiki/Oxytone 最終音節(ultima)に #鋭アクセント「 ´ 」 paroxytone en.wikipedia.org/wiki/Paroxytone 最後から２番目の音節(penult)に「 ´ 」 proparoxytone en.wikipedia.org/wiki/Proparoxy… 最後から３番目の音節(antepenult)に「 ´ 」

#古代ギリシャ語の文字と発音 単語内の最後の２音節に #曲アクセント「 ˜ 」が付く可能性がある。 それぞれの名称… ▶最終音節(ultima)の「 ˜ 」 perispomenon ▶最後から2番目の音節(penult)の「 ˜ 」 properispomenon ※アクセントの場所と種類による名称 origine-mundi.xyz/greek-accent-1/ .

#古代ギリシャ語の文字と発音 単語内の最後の３音節の いずれにも #鋭アクセント「 ´ 」が付く可能性がある。 それぞれの名称… ▶最終音節(ultima)の「 ´ 」 oxytone ▶最後から2番目の音節(penult)の「 ´ 」 paroxytone ▶最後から3番目の音節(antepenult)の「 ´ 」 proparoxytone

#古代ギリシャ語の文字と発音 母音字 α，ι，υ が 長母音となる事を明示したい場合， #マクロン(長音記号)を付けて ᾱ，ῑ，ῡ アー イー ュー と表記する。 しかし，これらの母音が #曲アクセント を持つ場合 マクロンを書かず ᾶ，ῖ，ῦ と表記する。

#古代ギリシャ語の文字と発音 3種のアクセント記号 ▶1) #鋭アクセント(acute accent) 「 ´ 」 高低アクセントの高. ▶2) #重アクセント(grave accent) 「 ` 」 高ではないことを表す. ▶3) #曲アクセント(circumflex accent) 「 ˜ , ˆ 」 長母音や #二重母音 の 前半が高く後半が低い.

#古代ギリシャ語の文字と発音 豆知識: 末尾から2番目の音節を指す「penult」は 羅paene ultimusの略語. ペナルティーキックなどの 英「penalty」とは 別系統で関連性がない. penalty: etymology en.wiktionary.org/wiki/penalty#E… 羅poenalis(英penalty)←羅poena(英pain)←古希ποινή(英penalty)

#古代ギリシャ語の文字と発音 語末の音節の名称:　別名など en.wikipedia.org/wiki/Ultima_(l… ① ultima 尾音節 ② penult=penultima 次音節 ・羅paenultima (paene=almost「ほとんど」) ・英adj. penultimate ③ antepenult=antepenultimate 前次音節 ・羅antepaenultima (ante=before「前」)

#古代ギリシャ語の文字と発音 語末の音節の名称 ① ultima [ʌ́ltəmə]最終音節 ② penult [píːnʌlt]最後から2番目の音節 =penultima →penultimate [pənʌ́ltimət]最後から二番目の，結びの直前の ③ antepenult [æ̀ntipínʌ̀lt]最後から3番目の音節 =antepenultimate [æ̀ntipinʌ́ltəmət]

#古代ギリシャ語の文字と発音 en.wikipedia.org/wiki/Aristopha… 前２世紀にアリストファネスが アクセント記号を発明した時， 当時の #コイネー のアクセント体系は #ピッチアクセント 式から #ストレスアクセント 式へ 移行する過渡期にあったか， またはすでに移行が完了していたかのようだ。

#古代ギリシャ語の文字と発音 前２世紀ごろ ビザンティウムのアリストファネスは 外国人に #ギリシャ語 の正確な発音を教えるため， アクセント記号を発明した. Aristophanes of Byzantium en.wikipedia.org/wiki/Aristopha… Inventions：Accent system. ※アテネの詩人のアリストファネスとは別人

#古代ギリシャ語の文字と発音 #気息記号「῾」「᾿」は 語頭の母音字の上に書かれるほか， 語頭の子音字 ρ (ロー) の上に 必ず #有気記号「῾」が書かれる慣例となっている。 英語で rhythm のような #ギリシャ語 由来の単語が rh- という綴りを持つのは， この有気記号「῾」が由来。

#古代ギリシャ語の文字と発音 #気息記号 の有無で 音や単語の意味が変わる. 例: ὄρος オロス /oros/「山」 ὅρος ホロス /horos/ 「境界」 ο の上にある「ʹ」のマークはアクセント記号. 気息記号「῾」「᾿」とアクセント記号が １か所にまとめて書かれるので 少し見づらいかもしれない.

#古代ギリシャ語の文字と発音 Η(エータ)が /h/ 音を表さないのはなぜ？ ③ #イオニア方言 式アルファベットは /h/ 音の有無を表せず不便なので， アレクサンドリアの文法家が /h/ 音の有無を表すため 「Η」に似た「├」「┤」という記号を使い始め これが #気息記号「῾」「᾿」に変化した.

#古代ギリシャ語の文字と発音 Η(エータ)が /h/ 音を表さないのはなぜ？ ② 前5世紀ごろ イオニア式のアルファベットが #古代ギリシャ語 全体で採用された。 そのため， #イオニア方言 以外でも Ηを「エー」と読むようになり， おかげで /h/ 音を表すアルファベットが無くなってしまった。