彼が私の左手をとった時、手の甲にキスするかと思った。でも彼はゆっくりと歯をたて私の血を啜った。そうして彼が付けた赤いキズは、彼との特別なキズナになった。私達の愛は、ゴシックでパンクロックでクラシカル。誰にも理解出来ないだろう。伸びた犬歯に触れながら、私は嗤う。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/Du4ULKoBfY

あの頃、どんなに頑張ってもクリア出来なかった。起用な奴がクリアしてファンファーレが流れる度、羨ましく思った。時が経ち、俺は廃品回収屋になった。懐かしいゲーム機を回収するべく近付くと、突然ファンファーレが鳴った。あの頃を思い出したのは、俺だけじゃなかったようだ。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

オマエ、ホストって仕事ナメてるだろ。姫はただの金を落とすゲストじゃない。姫は、恋人だ。会いに来てくれたその時間、俺達は束の間恋を謳歌する。好みがある？関係ない。見た目や性格がどんなブスだろうが、隣に座れる間は恋人だ。どんな姫も全力で愛せるのが、プロのホストだ。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/dzCYTpAEGi

また、見ている。彼女の視線に気付き、少しだけ体温が上がった。なんとなく視線を感じるようになって数カ月。その度に周囲を見回し、ある日彼女に気付いた。僕の事が好きなのか。あんな美人に想われるなら、純粋に嬉しい。彼女の眼差しが日に日に鋭くなってゆくのが気にかかるが。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/95mTXeBAd0

私が「嘘」をコレクションし始めたのはいつからか。もう大分昔。「嘘」は、一般的には悪いものとされる。でも、実は軽薄なもの、優しいもの、痛々しいものと色々と種類があることに気付き、その魅力にハマった。でも一番の偽りは自分という存在じゃないか、と思ったりもしている。 #小説 @RuinsMasa x.com/RuinsMasa/stat…

此の薔薇の意味を、貴方は理解してゐるでせうか。まうずつと前から、色と本数で密やかに私の心を発信してゐる。誰にも氣付かれないモヲルス信号。助けを求めるのは私なのか、貴方なのか。いつか暴走した私が、スノヲドロツプを活ける時が來ないことを、貴方の為に祈つております。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

何かを忘れている。何を忘れたかも忘れてしまい、ただ焦燥感だけがこの胸に広がる。得意のダンスも、生活に必要なアレコレも、友達や家族の名前も思い出せるのに。私は何を無くしたのか。それを想うたびに、涙がこぼれるのはなぜなのか。封印された記憶の鍵を、今日も探し続ける。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/bjizyiml2s

彼を前にした時、香水の甘い香りが鼻孔をくすぐった。踊る若者達の笑い声の残響。むろん、幻だ。かつてここは沢山のドラマが満ちていた。彼は時に優しく時に鋭く光を降り注ぎ、美しく演出してきた。あれから幾年、今は老王の如く悠然と佇み、行き過ぎる時間に光を投げかけている。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

さあ、その心臓に渡し給え。君の清らかな魂では、この世で生きていくのは困難だ。君は、心臓を渡したら死んでしまうのではないか、と危惧しているのかい？大丈夫。代わりに、私の心臓を授けよう。トレードというわけだ。良い子だね、ありがとう。無垢と無知は紙一重と知るがいい。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/7ccgelaqlz

勘違いしないでね？お義父様。貴方は母の男ってだけで、わたくしの父親ではないの。保護者ぶるのはおよしになって。貴方はただ、わたくしに従えばよいの。良い子にしていたらご褒美を差し上げてよ？傅く屈辱の中にある黒い欲望を、わたくしだけが理解出来る。それを忘れないでね。 #小説 @Kim414141 pic.x.com/elsqo4odzq

鳴り響くオルガンの音色に、私はゆっくりと瞼を閉じた。永かった。ずっと誰かに罰してもらいたかった。でも私の業は巧妙すぎて、誰にも気付いてもらえず。降りしきる雪のように、ただだだ罪は積っていった。でも、ようやく裁かれる。私は傅き頭を垂れ、断罪する神の言葉を待った。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

回転木馬はくるくるとまわる。子供達に忘れ去られ、軋んだメロディが奏でられる事もなく、ただまわり続ける。錆の浮いた馬に乗り、私もまわり続ける。やがて12回鐘が鳴り、私は気付く。これは回転木馬じゃなく、時計なのだと。私は人間ではなく、ぜんまい仕掛けの人形なのだと。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

独特の匂いに包まれ思わず周囲を見渡す。案内人は僕の様子に「君は巨人の身体は初めてか」と声をかけた。頷くと「ここは丁度肩から腕にかけての部分で、臭気が濃いんだ」と説明した。かつて世界を滅ぼしかけた巨人の残骸。匂いの向こう側に脈動を感じて、ぞわりと背中を震わせる。 #小説 @RuinsMasa x.com/RuinsMasa/stat…

この歯車はね、世界を動かす歯車なんだ。地球は自転してると言われてるけど、本当は違う。この歯車によって回っている、よく出来た「からくり」なんだ。誰が創ったか分からないけど、ただこれを回し続ける事が僕らの役割。もしかしたら「からくり」の創造主こそ、神様なのかもね。 #小説 @RuinsMasa x.com/RuinsMasa/stat…