擦り切れた記憶の中でうっすらと結ばれる像。はっきりと思い描けないのに、曖昧な断片が浮かんでは僕の心を突き刺す。ノイズがかかったテレビを、目を凝らして見てるような心地だ。その後、必ず焦燥感で息苦しくなる。彼女は過去の女なのか未来の女なのか。それだけでも知りたい。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/Y6uGVG0rDL

あの角に、彼女が立っていると思ったのは幻か。あの日と同じ黒い服で、小糠雨に濡れながら佇んでいた。そんなはずない。彼女の細い背中を押した、あの感触を今でも覚えている。でも昨日も今日も、彼女は佇んでいる。今度は私が彼女に押されるのか。むしろ、それを望む自分がいる。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/FeIoY4FAuc

その穴を覗き込んではいけないと言われてきた。かつては栄華を極めた神殿だが、やがて信仰は廃れ、悪いものが住み着くようになったから。怨霊より不定形で、運命より直接的なモノ。多分かつては神様だったそれが、ぞろりと這い出してこちらを見た。僕は絶望の穴に突き落とされた。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

サイバーな猫を拾った。懐かないどころか笑うことすらしない。飯の時すらも媚びない。いつも無表情。こんなデレない猫の何に惹かれるのか。多分、そう、きっと彼女は自分らしく生きる術を知っている。自然体の煌きが、偽りだらけの僕には眩しい。いつか笑って欲しい。彼女らしく。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/l7Ds2cbdZC

ねぇ、せんせい？あたしの身体を診察してくれる？あたしの何処かに悪いところがあるの。それは、目に見えない心の奥深く。自堕落な快楽に誘う、悪い悪いものがひそんでいるの。それを暴いてよ。せんせいなら、すべて見せてあげる。そうして、2度と戻れない場所に一緒にイクのよ。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/2ORGPxo1vp

さあ、もうへそを曲げないで。君が欲しがってた赤い靴を買ったよ。これを履いて笑って。僕は君の笑顔が大好きなんだ。え？こんな靴要らないから家に帰せって？哀しいこと言うなよ。君と僕との新しい生活を・・・え？そのナイフはどこから？あぁ靴でなく僕が紅く染まってしまった。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/nbvJYXyf0t

それは最初、小さな悪意でした。でも、日々生まれる妬みや嫉みを吸収し、大きく育ってゆきました。やがて殺意へと成長します。なお、殺意はゴールではありません。そこから「呪い」となって完成するのです。「呪い」は相手に向かうのではありません。貴方へと呪の道が出来るのです。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

本当はもっと、穏やかなやり方があったのかも。でも私にとって、一度全てをぶちこわす必要があった。私を守ってくれるこの部屋は、実は私を閉じ込める檻だと気付いたから。凄惨な部屋の真ん中に、意気地なしだった私の肢体が転がっている。それはなぜか、ママに似ている気がした。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/pD1nVnZSxh

地底まで続くと言われている階段に立ち、恐る恐るその先に目を凝らす。漆喰の階段は闇に溶け込んで、どのように続いているか見通せない。でも思えば人生だって似たようなものだ。どこでどうなっているかなんて、誰にも分からない。だから僕は踏み出す。未知なる何処かに向かって。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

紫陽花の花言葉をご存知？移り気､浮気、無常など。青い紫陽花は、辛抱強いという意味もあるとか。あなたは私を、紫陽花のように辛抱強いとお思い？ねえ、紫陽花に毒があることをご存知？酷くて昏睡状態になるのだとか。夢の中と現実の私と、どちらが優しいか。見比べて下さいね。 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

「ここに来る度に夏になったんだなあと思うね」「水はってないプールなんて寂しさ以外何も感じないだろ」「夏を満喫しようって気概が感じられる」「どこらへんに？」「あれ？見えないのかい？プールの底で蠢く輩の姿が。水底に引きずりこもうと、意気揚々としてる。夏が来たねぇ」 #小説 @11pre726 x.com/11pre726/statu…

囁き声が聴こえる？それは神様の声なんかじゃありません。貴方自身の心の声。欲望の声です。シスターがそんなこと言っていいのかって？お分かりにならないのね。シスターほど、欲望の声を聴き分ける天才はいなくてよ？禁欲というプレイを愉しむのです。その先に、天国はあります。 #小説 @Kim414141 pic.twitter.com/mzMnb2cDlG

僕たちはここで、よく賭け事をした。酒は常にショットで一気。酒に酔い、娘に好い、若さに依った。今はあの頃の残骸が、まぶしいほどのきらめきを放って、時折瞼に浮かび上がるのみ。親友と交わした最後の賭けは、どちらが生き残れるかだった。負けなしの君が、初めて僕に負けた。 #小説 @11pre726

彼女の白い指先が鍵盤に触れた瞬間、ポーンと高い音がした。私ははっと息を飲み、「そんなバカな」と呟いた。視力を失った彼女が、音を失ったピアノを奏でるなんて。失われたものでなければ描けない音楽なのか。嗚呼多分きっとそう。命を失った私だから、聴こえるのかもしれない。 #小説 @11pre726

いつか終わる予感を抱きながら、私達は儚い口づけを交わす。抱き寄せる腕の力も、耳に響く鼓動も、優しい温もりも確かにここにあるのに。それでも幸せな未来を描けない私達のか弱い恋は、迫りくる闇に追われながら消えてゆく夕暮のようだ。美しい煌きだけを残し、やがて散り往く。 #小説 @11pre726

ツーツートントンツー。僕は独り、廃墟で信号を送り続ける。先の戦争で多くの生命が失われた。でも僕はこの場所で、和歌の上の句を打ち続ける。下の句を答えてくれる誰かを待ちながら。季節すら死に絶えたけれど。ひさかたの光のどけき春の日に、静心なく花の散るらむことを祈る。 #小説 @RuinsMasa

ヴィランによって終末を迎え、人類は死に絶えた・・・と思われたが、例外がここに。いつも通り廃バスで昼寝してたら、なぜか終末のシナリオから漏れたらしい。例外は、やりようによっては必然になる。俺が生き残ったのは意味がある。さあ、ここから、逆襲のストーリーを始めよう。 #小説 @11pre726