2609噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up クーラーの効いた部屋の中で梅崎春生の『日の果て』を読む。フィリピンでの戦火の中脱走した軍医を射殺するよう命じられた男の話だ。殺人が繰り広げられる密林の陽射しと湿度を思った。現代の平和の脆さを思った。令和に生きる私は本を閉じ思うことを止めた。 pic.twitter.com/Pwsa4FDe6C

2608噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 光化学スモッグ警報が流れてきた。このまま遊んでると目や喉が痛くなることが分かっていたので、ゴム跳びをやめて帰ることにした。「ねえ。日本て公害で全滅するのかな」誰かが言った。大人にならずに死ぬのは嫌だなと思ったら、目が痛くなって涙が出てきた。 pic.twitter.com/DGIkWw11Bb

2607噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「東京」と言われると私は新宿を思い浮かべる。地方に住む私には想像も及ばない猥雑で危険で怪しい場所。「東京は人の住むところじゃなか」離婚して戻ってきた姉が風呂上がりのビールを飲みながら呟く。それでもいつか行ってみたいと私は密かに思っている。 pic.twitter.com/OecuweHolL

2606噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 東京駅で買った幕の内弁当を、昼になったので新幹線の中で食べ始めた。視線を感じた。顔を上げると、通路を挟んだ席の子と目が合った。そんなに見れたら食べにくいんだけど、と思っていたら、その子はゴージャスな釜飯弁当を取り出し、ドヤ顔で食べ始めた。 pic.twitter.com/DFgqYKhxeR

2605噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 女が海に身を投げたという連絡と共に、男は女からの小包を受け取った。チェーホフの『かもめ』が一冊入っていた。手紙はなかった。ただトリゴーリンの台詞『覚えがない！覚えがないなあ！』に線が引かれていた。男は本を屑籠に捨てると許嫁に会いにでかけた。 pic.twitter.com/BEkC6iPl9Q

2604噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 冷蔵庫にカクテルグラスに入ったペパーミントゼリーがいた。お酒が入ってるからといつもパパとママの2つしか作ってなくて私には一口しかくれない。でも今日はなんと6つもある。今日こそ私も食べられると思ったら「これお客さんの分」と6つ全部運ばれていった pic.twitter.com/jYoafGInrm

2603噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「ねえ、私と2人きりでいる時に落雷が原因で停電したら何をしたい？」「まずは玄関に置いてある懐中電灯を取りに行くかな」「え？私と2人でいるんだよ？それが本当に『したい』ことなの？」「ごめん。本当にしたいのは」「したいのは？」「雷の写真撮りたい」 pic.twitter.com/3ku81LSXcP

2602噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「初めまして」「僕はあなたに会ったことがある。モディリアーニの絵の中で」「やだ。私、丸顔だし首も長くないですよ」「あなたの瞳は塗り潰されて何も映さない。彼の瞳を描かない絵のように」他の男と同じようにこの男も殺すかどうか。抱かれてから考えよう pic.twitter.com/i1vmYrytjk

2601噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 長い髪を手で押さえながらシメのラーメンの麺を一本ずつ啜っている同僚が「女の子1人だと恥ずかしくてラーメン屋さん入れなくて」と既に食べ終わっているイケメン部長に女の子アピールしている。さてさて。この女を可愛いと思うなら部長も大したことないな。 pic.twitter.com/hJo9u8ab8Q

2600噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「四万六千日の功徳が得られるってテレビで言ってた」母から来たLINEを父に見せた翌日の朝。「もしかして朝イチでほおずき市行ってきたの？」父は黙って珈琲豆をミルで挽いている。「お母さんに持って行こうね」緑の葉の下でほおずきが父の代わりに頷いた。 pic.twitter.com/OFUlXhXGGc

2599噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 『最後の一葉』を読もうと青空文庫を開けた。ところが冒頭「元文三年…」と始まり（え？オー・ヘンリーって江戸時代に来日してたっけ？）と混乱しながらも読み進め読了後『最後の一句』という森鴎外の作品と知る。佳品に出会えた。間違えた自分を褒めたい。 pic.twitter.com/N6mYjOl2tR

2598噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「では、どうやってお二人が出会われたかを教えてください」「ナンパっす。デキたんで仕方なく」「分かりました。ではご紹介はこんな感じでいかがでしょうか。『新郎と新婦は運命の赤い糸に手繰り寄せられて出会われ、愛の結晶を得て結婚を決意されました』」 pic.twitter.com/uNRPcrG4iv

2597噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「今日彼氏と会えるって割には浮かない顔してない？」「だって1年に一回しか会えないって恋人の意味なくね？」「まあ今まで散々仕事せずにイチャコラしてたんだから自業自得？」「もう！この世には神も仏もいないのか！」「天帝がいたからこうなったんじゃ」 pic.twitter.com/b2VBtxTSw7

2596噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 40年前高校生だった私へ。高校生のあなたは俵万智の『サラダ記念日』を読むべきじゃなかった。なぜなら（このくらい私にもかける）と勘違いしたあなたは短歌の賞に応募しまくって落ちるから。大人になった今『サラダ記念日』を読み返してその凄さに震えてる。 pic.twitter.com/dsucaDOITW

2595噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「付き合って間もない頃これと同じ赤と青の江戸切子のお猪口を買ってくれた時、嬉しかったな」「あれから1年か。下戸だった君がこんなうわばみになるとは」「いやねえ人をヤマタノオロチみたいに言わないでよ」「いっそヤマタノオロチなら退治できるのに」 pic.twitter.com/W90AKoe43j

2594噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 冷えた梨が食べたいな。父は赤ん坊の頭ほどもある愛宕が好きで冷蔵庫に入り切らないと母がいつもぼやいていた。私はしっかり冷えたその梨を口いっぱいに頬張るのが好きだった。そんな私をみて両親はいつも笑ってた。両親ともう一度あの冷えた梨を食べたいな。 pic.twitter.com/vIFMNatV4S

2593噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 「またお会いしましたね」振り向いた彼女の顔に驚きがさざ波のように広がった。「まあ。日に3回もお会いするなんて、こんな偶然もあるんですね」お嬢さん、偶然なんてこの世に存在しないことを僕がしっかり教えてあげるね。君の全てを知っているこの僕が。 pic.twitter.com/5KJVmFjCaV

2592噺 #今日のすゆ噺 #120字小説 #毎日up 気がつくと娘が亀の子タワシで体を擦っていた。「痛いよぉ。真っ赤っかになったよお」「タワシはお鍋を洗う時に使うものよ。なんでまた体を擦ったの？」「だってばあちゃんがタワシで磨けば綺麗になるって言ったもん。綺麗になりたいの」恐るべし、乙女心。 pic.twitter.com/38uDhpn5Gn