テーブルの上に無造作に置かれた部屋の鍵。 氷が溶けかかったグラスの水。 鋪道を叩く雨。 バスケットボールをドリブルする少年。 散ってゆく桜の花びら。 低く垂れ込めた雲間を貫く稲妻。 遠ざかっていくクルマのテールライト。 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

小説を書く僕らは、意図的にエロスの表現を作中に取り込むべきである。それは何も恋心と性愛に限った話ではない。むしろ、恋愛やセックスとまったく関係のない場面の方が効果的だ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

芸術というものは、そのコアに「恋心と性愛」を抱え持っているのだ。文学にしてもそうだ。小説と短歌はエロスの表現であり、俳句はそいつを可能な限り封印しようとする #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

関ヶ原の戦いは日本から半世紀にもわたり文学を消し去った。今、パレスチナにおけるジェノサイドは、世界の全体から生命の讃歌──エロスを奪い去ろうとしているのではないだろうか #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

そこには「日本語の自然な呼吸」があるのだ、と そこには日本に固有なエロスがあったのだと言い換えてもいい #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

江藤淳は近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成らの作品を精緻に読み解いていき、日本は大局的に見れば中国文化の「亜種」かもしれないが、近松、西鶴、秋成によって日本人が古典として持つに足る「日本文学」が生み出されてきたのだと書く #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

日本を東西に分けた戦は、相手をなぎ払う刀で文学をもなぎ払ってしまったようだと江藤は書く この空白が埋まるには、井原西鶴の『好色一代男』の登場を待つしかなかった #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

批評家の江藤淳に『近代以前』（文春学藝ライブラリー）という本がある。この本は、関ヶ原の戦い以後、日本文学史には半世紀にも及ぶ空白が出現しているのだ──という衝撃的な書き出だしで始まる #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

太陽が降り注ぐ森や、激しく降った雨を集める川や、自然の中に息づく魚や鳥や獣や人間達がエロスを体現しており、それがないと画家は絵筆を握ることができないのだろう 文学にとっても事情は同じだろう #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

それから彼は少しの間黙り、動き始めた新幹線の窓の向こうに視線をやりながらこう言った 「原発事故でそのエロスは大きなダメージを受けました。僕はこれからしばらくは、絵が描けないのではないかと思っています」 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

「もちろんそれもあります。しかし、それ以上に重要なのはエロスを学ぶためですよ。エロスとは生命そのものであり、絵画はそれを礼賛するために発展しました。だから、絵を描く者は裸体のデッサンをするのですよ」 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

僕の手元を覗き込みながら、洋画の先生がこう言った 「美術の世界では、基礎的なレッスンとして裸体画を描くでしょう。なぜだかわかりますか？」 少し考え、僕はこう答えた 「人間の肉体が、造形を学ぶのに最も適しているからですか」 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

その頃東北芸術工科大学で教員をやっていた僕は、ある時親しくなった洋画の先生と上りの新幹線に乗っていた。既に夜である。僕は小型のガイガーカウンターを持っていた。福島駅に着くと線量が増大することがよくわかった #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

無関係と言うと言い過ぎかもしれないが、少なくとも同じものではない。僕がそのことを思い知らされたのは、2011年の東日本大震災の際だった 津波によって多くの人たちが犠牲になり、福島の原発事故は深刻な影響を僕らに与えた。その頃── #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

【画家はなぜ裸婦像を描くのか？】 今週は、エロスについて語ろうと思う。と言っても、エッチな話ではない。エロスとは、生命の源泉であり、あらゆる芸術のコアにあるもので、品のない欲望やセックス自体とは無関係なものだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051…

#山川健一 #私物語化計画 5/10 初心者にもよくわかる文章教室 04 エロスの表現を身につけよう yamakawa.etcetc.jp/lecture2024051… ──もしもあなたがエロスをメタファーにした表現方法を身につけることができれば、作品は一気に読者の深い場所に届くことになるだろう

この悪癖を治すのはとても大変だが、大丈夫。レッスンすれば治る どういうレッスンをすればいいのか─── #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

日本語は、じつは、とてもむずかしい言葉である。正しい日本語を書ける人は、大人でも案外少ないものだ。 　習うより慣れろと言うが、正しい日本語を身につけるには、日常的に文章を書くことがいちばんの近道だ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

現代日本語ではこれは許されない。しかし僕らは紫式部や清少納言のDNAの延長で小説を書かなけれなならないから、助詞の問題で迷うのかもしれない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

清少納言も前後の言葉を可能な限り省略して「春は、あけぼの」と書いたのである 文法的にはかなり高度なことをやっているわけだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

「春ならやっぱりあけぼのがいいわよね」と清少納言は言っているわけだ 清少納言に限らず当時の王朝文学では、不要な言葉は可能な限りカットした。『源氏物語』が難解なのは主語が省略されているからだ。 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

NHKの大河ドラマ『光る君へ』にも登場する清少納言『枕草子』の書き出しは多くの日本人が覚えているだろう。「春は、あけぼの」だが、この「は」はどういう意味を持っているのか？「春は、たのしい」「春は、きらいだ」などの「は」と同じだろうか？ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

日本語の助詞の使い分けには曖昧さがあるとも言える。その微妙なニュアンスを理解することが必要なのだ そして肝心なのは、助詞の間違いは「読み返せばすぐに気が付く」はずだということだ。もちろん気が付いたらすぐに訂正しておくことが大切だ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

助詞は言葉に意味を与える語なのだ。格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞などがある ・薔薇が咲いた。（主語であることを示す助詞「が」） ・寒いから行かない。（理由をあらわす助詞「から」） ・猫をいじめるな。（禁止をあらわす助詞「な」） #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

たとえば「海に行く」と「海へ行く」の「に」「へ」や、「世界でただ一つの」と「世界にただ一つの」の「で」「に」や、「あなたが好きだ」「あなたを好きだ」の「が」「を」は、どちらも正しいがニュアンスが少し違う #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

助詞とは、「てにをは」のことだ。単語に付加し自立語同士の関係を表したり、対象を表したりする語句の総称だ。付属語であり、活用しない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

文章を書く際にも「音痴」としか思えない人たちがいる。これはあまりにも基礎的なことなので、教えようがないのだ。自力でやってもらうしかない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

これを直すのは簡単そうに思えるが、実のところとても難しい。なぜかと言うと、助詞の問題も主語と述語の問題も技術の問題ではなく、精神的な、あるいは歴史的な問題かもしれないからだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

大学で教えた経験、物語化計画で皆さんの原稿を日々読ませて頂いている経験から言って、文法の問題はとにかく以下の2点に尽きる！ ・助詞の使い方を間違えているケース ・主語と述語がきちんと対応していないケース #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

言語は、カオスに形を与える機能を持っている。文法的な間違いがあると、カオスはさらに深まる。文法の間違いは、可能な限り修正しなければならないのだ まあ、とは言え、母語なのだからそんなに身構える必要もない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042…

#山川健一 #私物語化計画 4/26 初心者にもよくわかる文章教室 02 あんたはカッコよく書いたかい？ yamakawa.etcetc.jp/lecture2024042… カッコいい文章を書くためには、表現力を磨かなければならない。そのためにはまず、文法通りである必要がある。どんなに声が良くても、音痴だと歌にならない──

自分が実現したい作品をイメージすること そして、そいつを書けるのは世界に俺一人しかいないんだよなという確信を持つこと 洗面所に行って顔を洗おう。そして鏡に向かって 「おまえは最高だ！」と言ってみよう #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

そんな具合に「私」に自信をつけることができたら、カッコいい文章を書き始めよう エッセイでも小説でも、それは同じである この時大切なのは、カッコよさと言うものは10人の人間がいたら10通りあるということだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

Macintoshに向かう前に洗面所で顔を洗い、言ってみよう 「お前は才能の塊だ。アルチュール・ランボーの再来だぜ。ドストエフスキーも真っ青だ」 「私がこれから書くエッセイは、宇野千代の随筆をさえ超えるかもしれないわ」 #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

文章に関するハウツーやスキルを学ぶ前に、文章を書くという体勢を整えなければならない。全てはそれからだ マイルスだって、いつも万全の態勢であったはずはない。僕らも、「書く」状態にある「私」を捕まえることが大事なのだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

文章教室なのになぜこんな話をしたかというと、マイルス・デイヴィスがトランペットを吹くのと同じように、僕らが文章を書き記す時にはテンションを上げなければならないからだ #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

女性はよく「私なんて」という言葉を口にするけれど、それは傷つきたくないという気持ちからくる防衛本能なのだと思う。だけど、「私なんて」という言葉ほどあなたの魅力をそこねてしまうものはない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

女性なら 「きれいね、完璧よね！」と言えばいい 「私なんて」とか、「もっと○○○なら」などと言ってはいけない 「もっと勇気があって美人なら、幸せになれるのに」なんてことは、思ってもいけない #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…

「おまえは最高だ。その仕事は絶対にキメられるよ」と 残念ながら僕はハンサムではない。ルックスに自信があるわけではないので、「最高だ」のところだけ真似することにしたのだ あなたも、鏡に向かってそう言えばいい #山川健一 #私物語化計画 yamakawa.etcetc.jp/lecture2024041…