#子墨子、#公尚過 に謂(い)いて曰く、「子、#越王 の志をいかんと観(み)る。意(おも)うに越王わが言を聴き、わが道を用いんとせば、#翟(てき)、往かんとす。腹を量(はか)りて食い、身を度(はか)りて衣(き)、自ら群臣に比せん。なんぞよく封(ほう)をもってせんや。【1】

#子墨子 謂 #公尚過 曰、子観 #越王 之志何若。意越王将聴吾言、用我道、則 #翟 将往。量腹而食、度身而衣、自比於群臣。奚能以封為哉。【2】

故に #翟(てき)おもえらく、耕して飢に食わせず、織りて寒に衣せずといえども、功(こう)、耕してこれに食わしめ、織りてこれに衣する者に賢(まさ)れり、と。故に翟おもえらく、耕織せずといえども、功、耕織より賢るなり」。【1】

#翟(てき)おもえらく、先王の道を誦(じゅ)して、その説を求め、聖人の言に通じて、その辞を察し、上は王公大人を説き、次は匹夫徒歩の士に説くにしかず。王公大人、わが言を用いば、国必ず治まり、匹夫徒歩の士、わが言を用いば、行ない必ず修(おさ)まらん。【1】

#翟 以為不若誦先王之道、而求其説、通聖人之言、而察其辞、上説王公大人、次説匹夫徒歩之士。王公大人用吾言、国必治、匹夫徒歩之士用吾言、行必修。【2】

藉(か)りにもって尺布を得るとするも、その天下の寒者を煖(あたた)むる能わざること、すでに睹(み)るべし。#翟 堅(けん)を被(かぶ)り鋭(えい)を執り、諸侯の患(うれ)いを救わんことを慮(はか)る。盛んにして然る後一夫の戦に当る。一夫の戦は、その三軍を御(ふせ)がざること、すでに睹るべし。【1】

藉而以為得尺布、其不能煖天下之寒者、既可睹矣。#翟 慮被堅執鋭、救諸侯之患。盛然後当一夫之戦。一夫之戦、其不御三軍、既可睹矣。【2】

これを天下に分てば、人ごとに一升の粟を得る能わず。藉(か)りにもって一升の粟を得るとするも、その天下の飢者を飽かしむる能わざること、すでに睹(み)るべし。#翟 織りて天下の人に布(き)せんことを慮る。盛んにして然る後一婦人の織に当る。これを天下に分てば、人ごとに尺布を得る能わず。【1】

#子墨子 曰く、「子のいわゆる義もまた力もって人に労するあり、財もって人に分(わか)つあるか」。#呉慮 曰く、「有り」。子墨子曰く、「#翟(てき)嘗(こころ)みにこれを計(はか)らん。翟耕して天下の人を食(やしな)わんことを慮(はか)る。盛んにして然る後一農の耕に当る。【1】

#子墨子、#公尚過 に謂って曰く、子、#越王 の志を何若(いかん)と觀(み)る。意々(そもそも)越王將に吾が言を聽き、我が道を用いんとせば、則ち #翟(てき)將に往かんとす。腹を量(はか)って食い、身を度(はか)って衣(き)、自ら羣{群}臣に比すべし、奚(いずく)んぞ封(ほう)を以てせんや。【2】