#不気味な書き出し文藝 「お姉さん？」 鏡を覗く、姉の後ろ姿は儚げでどこか遠い。振り返った、姉は優しく微笑んだ。その唇はルージュのような血で濡れている。ハッと息をのみ、ベッドからとびおきた。汗をぬぐって鏡を見る。むせる息を整えると、にっこりと笑って言った。「姉さんまだよ、まだまだ…

#不気味な書き出し文藝 ケバブ屋には目がなかった。積み重なった肉が放つ、強烈な臭気を頼りに包丁でそぐ。ぞりッ！ぞりッ！目の悪い店主は音には敏感で肉の塊をそぎ落とすたび「ニタア」と笑った。肉の柱には蠅がたかって所々に白い点のような卵を産みつけている。その表面を削ぎ落として客に出した

#不気味な書き出し文藝 頭がぼーっとして先が視えない。と思っていたら、それは周りも同じのようだ。道ゆく人々はうつむきながら、手を前にだしてうつら、うつらと歩いている。ここはどこだろう？それにしても暗い。霞がかった通りは人であふれていたが、誰もみな、周りに対して無関心だった。

#不気味な書き出し文藝 学校帰りに、友達とよった駄菓子屋でボンタンアメを買った。くちゃりくちゃりと舌で転がすと友達が「痛い」と振り返る。その顔はトラックで轢かれたようにところどころひしゃげて、ぐちゃぐちゃだ。あんぐりと開けた口から、アメを落とすと、彼の首も落ちて絶叫した。

#不気味な書き出し文藝 カラスが妙にうるさい。空を見上げると黒雲のような群れが太陽を覆い隠していた。ぼとり…何かが落ちてきた。近づくとそれはボロボロになった猫だった。ぼとり…今度は首輪をはめた犬。ぼとり…ベビー服を着た赤ちゃん。ぼとり…隣のクラスの不良。ぼとり…禿頭の校長先生。

#不気味な書き出し文藝 カラスの鳴く声で目覚めた。それも一羽や二羽ではなく大群が騒いでる。私は気にせず朝食を作り夫と娘に挨拶をした。 「外が騒がしいね」 夫は答えず、黙々と料理を口に運ぶ。彼を送り出し、娘を幼稚園へ送迎してから帰った。そして、カラスに向かって銃を撃つ。今日も明日も。

#不気味な書き出し文藝 グサリ。刃物で肉を裂くような音がして目が覚めた。汗の滲んだ額を拭うと手が血まみれだった。 「ぎゃあー！」 悲鳴をあげて気の弱い私は失神してしまう。気づくと雫が落ちる音が聞こえた。天地が逆様で大勢の人達と一緒に吊り下げされている。そこに刃物を持った男が現れた。

#不気味な書き出し文藝 雪山のペンションに缶詰になって執筆に没頭していた。するとノックの音が。 「あんたが殺した小説の登場人物だ」 雪の上で大勢の傷を負った人達が集まっていた。取れた首を持っている者までいる。 「俺達はお前の罪悪感だ」 胸にナイフが刺さった男が笑い、冷や汗が頬を伝う。

#不気味な書き出し文藝 「趣味は？」 「拷問です」 口角の隅を吊り上げて答えた。ここはシリアルキラーの面接会場。担当する面接官も連続猟奇殺人鬼だ。 「では、そろそろ行こうか」 合格した私達は、改造人間になってこの世の悪と戦う。毒は毒を持って制す。政府が作った遺族も納得する計画だった。

#不気味な書き出し文藝 背中が痒くてたまらない。孫の手を使って掻いたが、なかなか痒みの患部には…ゴリ！　手があらぬ方向へ曲がった。グリ！戻そうと思ったら、今度は別の手が明後日の方角へ…そこでスマホの緊急アラームが。どうやら津波が迫っているようだが、身動きが取れない。だ、誰か…

#140字小説 #不気味な書き出し #不気味な書き出し文藝 は終わってしまったのですが、すっかり不気味な書き出しを書くのが好きになり、勝手に続けたいと思います。

４月の読書６冊 ※小説4本&X上で文藝の「不気味な書き出し」みたいなの抱えていたんです←言い訳 ５月の読書11冊 ちなみに １月13冊 ２月10冊 ３月14冊 2024年5月末時点で通算54冊。 #読書 #読書マラソン #不気味な書き出し文藝 pic.twitter.com/EU9V5sGonn

返信先:@word__wizコメントありがとうございます。 こちらは、本ではなくて、タグなんですね。 #不気味な書き出し文藝 というツイッターのホラー小説 のことです。 ただ、最近は書く人も減ってきてしまいました。

#不気味な書き出し文藝 父は陰気な老人だった。いつも他人の陰口をいって、嫌いな物は絶対に食べない。ホームに移ってからも、喧嘩をして迷惑をかけていた。そんな父が死んで、ホッとしたかと思えば、私も似たような老人になってしまった。世の中を憂い、他人を羨む。惨めな人生がスパイラルする。

#不気味な書き出し文藝 「君は我が社に尽くしてくれた。だが、そろそろ休みたまえ」 ２０年勤めた会社をリストラされた。心に隙間風が吹いている。それを埋めようと、上司に礼を告げに行った。だが一言も返さずに、だんまり。こんなのあんまりだ。初めて涙がでた。どこからかサイレンの音がする。

#不気味な書き出し文藝 真夜中に扉が音を立てる。風に違いないが薄気味悪い。「誰かいますか？」声をかけて表を見るが人の姿はない。「脅かさないでよ」扉を閉めて後ろを振り返る前に、肩に手が置かれた。あまりの怖さにパニック。叫びに驚いたご近所が警察を呼んだ。パニックになった私は撃たれた。

#不気味な書き出し文藝 猫が笑うところを見たことある？って彼氏に訊ねたとき、彼は「笑うもんか」と小バカにしてきた。 理系で秀才の彼だ。非科学的なことなんて信じないのだろう。 私は「そうだよね」とごまかしたけど、数日後、彼から不可解な電話が掛かってきた。 「なぁ…黒猫が笑ったんだよ…」

#不気味な書き出し文藝 映画の撮影に森へ行ったら手を蜂に刺された。炎症は腕全体に広がり、焼ける様な痛みに苛まれる。掻くと膿がこぼれて悪臭が漂った。腐れ落ちる程に腕の傷が酷くなった時。枕元にあの時の蜂が現れた。蜂は群れをなして集まり、鉤爪の男に生まれ変わる。「時はきた」と男は囁く。

#不気味な書き出し文藝 娘のお腹が大きくなった。だが父親がわからない。教会にも通っている敬虔な家庭は、事実を隠したがった。事実…それは家族にもわからない。満月の日に悪夢にうなされた彼女は、枕元に悪魔がきたという。本当にそれだけだ。お腹の膨らみが大きくなる程に不安も肥大した。やがて

#不気味な書き出し文藝 ここは殺人料理店。中華鍋を炙る小太りの男を侮ってはいけない。こう見えて凄腕の殺し屋だ。遺体の処理に選んだのが料理という寸法さ。これが格別に美味い。一度食べたら忘れられない味で、高い金を払って遠方からグルメが押し寄せる。無論、そいつらは食材の秘密もご存知だ。

バイバイばっかりで悲しくなってたけど、それは勘違いだったのかもしれない。 私は最初から、なんにも感じてなんかいなかったんだよ。 #不気味な書き出し文藝

#不気味な書き出し文藝 眠い。残業続きでここの所、マトモな睡眠を摂っていない。だんだんと視界が朧げになってきた。人の顔が二重にも三重にも映る。…おや？アレは？課長だ！ 禿頭に眼鏡の課長が、私を無能だとなじる。まるで犯罪者扱いだ。罵声はシュプレヒコールとなって、私を崖に追い詰めた。

#不気味な書き出し文藝 お金が怖い。従姉妹はパチンコで借金取りに追われて頭がおかしくなった。家に無心にきた所を腹を蹴飛ばして追い払う。あの尋常じゃない目。お金のせいだ。それからなるべく自分の元にお金を置かないと決めている。お金さえなければ、争う事はない。ひもじささえ我慢できれば。

#不気味な書き出し文藝 除夜の鐘が鳴る。音は森を伝って藪蚊の耳に入った。だがそれが最後だった。超自然的な意志によってDNAが呼び覚まされた蚊は進化し巨大化した。殺人モスキートの群れは街を５分でミイラの骨董市にした。焦り狂った政府は焦土作戦を開始。生者も死者も等しく爆炎に吹き消された。

さよならばかりで悲しいように思っていたけど、違う。わたしは最初から、なにも感じてはいなかったんだよ。 #不気味な書き出し文藝

#不気味な書き出し文藝 「湯加減を見て」というお母さんに近づくとぐつぐつ煮えた鍋に顔を突っ込まれ大火傷。お父さんに首を斬られて材料にされた僕はシチューと一緒にコトコト。何も知らない妹が、お兄ちゃんの骨を拾ってネズの木に埋めました。生まれ変わった僕は、なんて可愛い小鳥なんでしょう。

#不気味な書き出し文藝 お爺さんは山で死体を隠し、お婆さんは川で血を洗います。旅人をもてなすフリをして、山賊まがいの行為を働いた二人を罰するため、川から桃の香りがする青酸カリが流れてきました。 「今日のお茶は、桃の香りがするね」 ２秒後に、二人は手を取り合って亡くなりましたとさ。

#不気味な書き出し文藝 長い、長い夜が明けて、僕達は納屋をでた。吸血植物は日光に弱い。だが盲点があった。彼らは焼き尽くす陽光を身に受けても抗体を作って、より強く進化した。もう人類では出遅れだ。そこへUFOが現れ、救済に来たかと思われたが、胡椒をふって生き残った方を食べるつもりだ。

#不気味な書き出し文藝 百話読むと呪われるツイッター小説があった。そんなファンならば呪いでなく祝福を授けたいと男は思った。だが呪いは本物だった。自作の参考にと読み進めていたツイッター小説が百話に差し掛かった時。彼の脳裡に今までにない衝動が訪れた。永劫の創作という呪いに憑かれたのだ

#不気味な書き出し文藝 顔をかすめる虫の羽音で目が覚めた。足がかゆい。いや足だけじゃなく、体中が。穴の空いたような発疹が浮き出て、掻きむしると血で皮膚が汚れた。医者に診せる必要があるかもしれない、と危惧しつつ、夜のシフトに備える。今日こそは部屋の掃除をしよう、と思い続けて早５年。

#不気味な書き出し文藝 闇だけが広がっていた。漆黒の海と違い風と波音はせずに、ただ静寂が横たわっている。祝祭の日には余りに寂しい。そこへ堰を切ったように、間の長い産声がして赤児が生まれた。人ではなく、ましてや今までに生まれたどんな生き物でもない。赤児の名は魔王と呼ばれ恐れられた。

#不気味な書き出し文藝 「君は２つの間違いを犯している」 ひとしきり暴れた後でどうにもならないと悟ったとき、男はゆっくり口を開いた。 「私は綺麗好きでね。現場に痕跡は残さない。そして、お喋りが嫌いだ。騒ぐのは賢いやり方ではなかったね」 彼は白い歯を見せてナイフの刃先を指でなぞった。

#不気味な書き出し文藝…

#不気味な書き出し文藝 「ぶった斬る！」 怒鳴りながら隣人が中華包丁を持って乱入した。ママンの首が斬られ、血が噴水のように吹き飛ぶ。パパンが応戦しようと肩に手をかけたが、蹴り飛ばされて脳天を袈裟斬りされた。トドメに投擲された包丁が、私の目に刺さる。こうしてゾンビ一家は退治された。

#不気味な書き出し文藝 光が瞬いた直後に物凄い爆音がした。気づくと壁に寄りかかっていた。 「目、目が…」 神経と目玉が卵を絡めとるパスタのように顔の前で揺れている。両腕の先の感覚がない。でも私は生きていた。まだ生きなきゃ。生きたい、生きたいという想いが屍を踏み越えさらに歩を進める。

#不気味な書き出し文藝 数学者が、黒板に無数の文字を書きこんでいる。だが限界がきて微睡み始めた。黒板は悪魔の姿をして雄弁に物語る。 「数秘術の奥義を暴いたとき、終末が訪れるだろう」 悪夢にうなされて目が覚めると円で囲まれた答えが書いてあった。それは新型爆弾の基礎理論だった。

約束したから。 あの日、確かに、約束をした ……したはずだから だからこれはほんの悪戯で 少ししたら帰ってくるつもりだったのだ、本当に。 #不気味な書き出し文藝

『本日は故 空藤 ユウ子の葬儀に遠路はるばる御会葬いただき誠にありがとうございました。』 小さな輪転印刷機が次々刷り上げる文面にインクの掠れや溜まりが無いかチェックしながら、ふと、この『空藤ユウ子』の礼状を刷るのはもう三度目になるのではないか、と気がついた。　#不気味な書き出し文藝

#不気味な書き出し文藝 ホラー映画の格闘シーンで、男が化け物に喰われようとしている。それを観て、騒ぐティーンエージャーの顔が、虚空に喰われたように欠損した。同時刻。同じ映画を視聴していたカップルが、イタズラにサメに噛まれたような傷を負って倒れた。その動画はゲリラ的に現れるという。