古代の聖人は、食糧を宝とした。#周書(しゅうしょ)には、「三年分の食糧のたくわえがなければ国は滅びる。家は離散の憂き目にあう」と書かれている。国にとって備えがいかに大切であるかを言っているのだ。【2】

且(か)つ夫(そ)れ食は聖人の宝とする所(ところ)なり。故に #周書 に曰く、「国に三年の食なきは、国其(そ)の国に非(あら)ざるなり。家に三年の食なきは、子其の子に非ざるなり」。此(こ)れ之(これ)を国備(こくび)と謂(い)う。【2】

【士不入学】『#周書』の #糴匡篇 に「成年餘子務藝年儉餘子務穡」{成年には餘子(嫡子以外の子)藝{武芸}を務め、年儉{凶作}には餘子、穡(しょく)を務む}とある。それに據(よ)れば、饑饉の年には、士の次三男等は、学校に入らずに耕作に勉める。一概に皆悉(ことごと)く入学させないことではない、【1】

【子非其子也】#畢沅 は『#周書』にある #夏箴(かしん)に「小人無遇天饑臣妾輿馬非其有也、國無兼年之食遇天饑百姓非其有也」を引き、本文の義と大略(だいりゃく)相同じとなす。#藤澤南岳 は、本文の二つの子の字を以て、並(とも)に當[当;まさ]に家の字に作るべしと云う。また一つの説である。【2】

【周書】#周代の書。#孔子 の添削した『#尚書』以外の文なので、世に逸書と稱[称]す。#孫貽讓 は、『#墨子』 は #夏代の敎 を稱述するもので、『#太平御覧』五百八十八に「胡廣百官箴叙云墨子著書稱夏箴之辭」とあるのを引いて、本書には『#周書』とあるが、『#夏箴』に改めるべきと云う。【1】

『#周書』#命訓篇 の句「極賞則民賈其上賈其上則民無讓無讓則不順」{極賞スレバ、則チ民(タミ)其ノ上ニ賈(コ)ス。其ノ上ニ賈スレバ、則チ民 讓(ユズ)ルコト無シ。讓ルコト無ケレバ、則チ順(シタガ)ワズ}とあるのを引いて、#孫貽讓 は、[極賞云云]を解釈。【2】

【故曰以其極賞。以賜無攻。虛其府庫以備車馬衣裘奇怪】 [極賞]とは、至極無上の褒賞である。#孫貽讓 は『#周書』#命訓篇 を引き、本文を解す。人君もし恩賞を濫(みだ)りに与える時は、臣下は萬一を僥倖し、奇功を樹て、以て其の上に売らんことを求める。隨って遜譲(そんじょう)の心なきを云う。【1】